過去に遡ることで恋愛における悲しみや切なさを描く

―― 監督の過去の作品『アレックス』同様、時間を遡っていく回想が印象的でした。それにより、どのようなことを表現しようとしましたか?

監督「たとえば、冒頭でこの船が沈むと分かっていてその経緯を振り返るみたいに、2人が破綻している状態から始めました。
過去に遡る途中、2人の色んなラブシーンが登場するけれど、その全てが決してエロティックではなく、それぞれに悲しみを伴っていたり、切ない音楽が流れています。
ただ単にエロティックな映画として観るというより、この2人が破綻すると分かって観ることで、不安や悲しみや切なさとかが感じられる。だから、現代から過去に遡り、《この2人に一体何があったのか》を徐々に解き明かしていく手法をとりました」

ギャスパー・ノエ 『LOVE【3D】』 たけうちんぐ
©2015 LES CINEMAS DE LA ZONE. RECTANGLE PRODUCTIONS. WILD BUNCH. RT FEATURES. SCOPE PICTURES.

―― そして、マーフィーを取り巻く2人の女性キャラクターが対象的で印象に残りました。
情熱的で感情に左右されがちなエレクトラと、常に受け身のオミ。2人をこのキャラクターにしたのはなぜですか?

監督「実は元々初期に考えていた人物設定とは、キャスティングしていくうちに変わってきました。
元々エレクトラは感情的な人ではなくて、もう少しバランスの取れたキャラクターを考えていた。オミもお人形さんみたいで脆く、アジア人でも面白いかなと。そして、マーフィーも彼女であるエレクトラと凸凹コンビにするためにダスティン・ホフマンみたいな小柄の男性にしようと考えていました。
ところが、キャスティングで色んな人に会っていくうちに《こういう人のほうが面白い》となり、オミはクララ・クリスティンというデンマーク人で存在感がある人になったり…。
結果は対象的になったけど、もともとそこまで考えていなかったんです。面白い組み合わせだなと思っていたら、自然に自分の周りにいる人たちみたいな性格になりましたね」

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 本作がただのエロティシズムに満ちた映画に落ち着かず、全ての人の恋愛の経験を思い起こす作品になったのは、3D描写以上に奥行きのある回想劇のせいなのかもしれない。
身近な人を題材にしたプライベート・フィルムに味付けをすることで、悲しみや切なさといった精神的な感情を呼び起こすのだろう。

 当たり前にある“モノ”であるはずの男性器や女性器などにボカシが入り、当たり前にあってはならない銃や爆弾が今もなお数多くの劇場のスクリーンで飛び出している。

“3Dセックスシーン”に誰もが反応するが、逆に今までになぜそれがなかったのか。監督が冒頭で語った現代の疑問から、それについて深く考えさせられた。

『LOVE【3D】』は現在全国公開中!

監督・脚本:ギャスパー・ノエ キャスト:カール・グリスマン、アオミ・ムヨック、クララ・クリスティン
配給:クロックワークス
原題:LOVE 3D/2015年/フランス・ベルギー合作映画/135分/R18