死ぬまでには観ておきたい映画のこと

紛争よりエロティシズムが規制される時代『LOVE【3D】』ギャスパー・ノエ監督 インタビュー

観る者の恋愛トラウマを視覚的にも精神的にも呼び覚ます強烈な映画――『LOVE【3D】』。今回は本作を手がけたギャスパー・ノエ監督にインタビューを行い、日本とヨーロッパの性に関する捉え方の違いや、登場人物たちが実在しているかのようなリアルなキャラクター、そして、時系列を遡る回想劇である意味など興味深いお話を伺いました。

 現在公開中の映画『LOVE【3D】』は、観る者の恋愛トラウマを視覚的にも精神的にも呼び覚ます強烈な作品だ。
数々の衝撃的な作品で知られるギャスパー・ノエ監督がなぜ今回、マーフィーとエレクトラ、二人の男女の恋愛を取り上げたのか。
《精子や性器が飛び出す3Dセックスシーン》という触れ込み以上に、肉体的な生々しさを超越した精神的な恋愛描写に興味をそそられる。

 日本とヨーロッパの性に関する捉え方の違いや、登場人物たちが実在しているかのようなリアルなキャラクター、そして、時系列を遡る回想劇である意味など、来日した監督自身にお話を伺った。
そこから浮かび上がる、極私的・3D恋愛映画とは?

今はバイオレンスよりエロティシズムが規制されてしまう。

ギャスパー・ノエ 『LOVE【3D】』 たけうちんぐ
ギャスパー・ノエ監督

 インタビューの冒頭、性描写の規制が厳しい現代について疑問を投げかけたギャスパー・ノエ監督(以下、監督)。

監督「日本とヨーロッパとでは社会を見る目が少し違いますが、ヨーロッパでいうと近年は恋愛関係のことよりも男同士の力の見せつけ合いで、中東を始め紛争が色んなところで勃発している。そういった不穏な動きが《愛》から遠のき、戦いとかそういう暴力的なものに時代が移ろいでいる。
もちろん普通に男女の恋愛関係は存在するけど、社会の集団としての注目の的が紛争などそういう暴力的なものに注目がいっている気がします」

―― 『LOVE【3D】』の3D描写に日本ではボカシが入っています。監督は本来あるはずの“モノ”を粛清する現状をどのように感じていますか。

監督「今は通信・コミュニケーション手段が発達するのと相反する形で、失われてきている価値観がたくさんあります。西洋社会では肉体的でエロティックな映画がだんだん減ってきていて、その逆に武器を持った暴力的な戦争モノが氾濫しています。
友人に聞いたところ、インスタグラムなどでは女性の胸の写真がNGになってしまっているらしいですね。女性の胸というものは普通にあるものだし、人は産まれたら母乳を吸うのが最初の社会との繋がりであり、最初の幸福感をもたらしてくれるものなのに。
そういった自然にあるものがNGになってしまう反面、ナイフや機関銃や爆撃の風景などが規制されないのがおかしいように思います」

―― どうして、そのような流れが生まれたのでしょうか。

監督「今の世の中は何でもコントロールできなければいけない社会になってきている。愛の衝動や肉体的欲求は誰しもが持つものなのに。
波乱に満ちて傷を負ったり、混乱したり、苦痛を伴ったりするとネガティブな部分はコントロールが効かなくなってしまう。そんな姿はあまり表に出してはいけないという風潮もあるのかもしれませんね」