父の「弱さ」をいつか許せる日が来るまで

 両親をいまだ許せない長女と、姉が幸せになってほしいと願う次女、父を知らない三女と、自分の存在に疑問を持つ四女。
彼女たちの亡き父は、劇中で一切姿を見せない。そのため、存在感が逆にとてつもなく大きく、四姉妹の葛藤がより浮き彫りになっています。

 特に、長女・幸の中で、父の存在は大きいかもしれない。
幸は母と険悪な関係でありながら、まるで父の幻影を追うように不倫愛で恋人に寄り添う。

 誰にでも優しくする性格が災いし、家族を幾つも作ってしまった父。「優しくてダメな人だったのよ」と幸も形容するように、彼の優しさは弱さだったのだろうか。
彼が残した四姉妹が“新しい家族”を作っていく過程がたくましく、最終的に父の「弱さ」を許すことで救われるのかも知れない。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと 海街diary 離婚 離縁 綾瀬はるか 長澤まさみ 夏帆 広瀬すず (C)2015吉田秋生・小学館/「海街diary」製作委員会

 是枝裕和監督の演出は、いつも日常を尊重する。
彼の日本の四季が美しく切り取られた映像や、穏やかな登場人物たちのおかげで、私たちの日常が映画の延長線上にあるようで、この世界が愛おしく思えてしまうことでしょう。

 是枝監督の作品名を借りるなら、まだ「誰にも知られていない」四姉妹が、「そして家族になる」までを描いた素朴ながらも力強い作品です。
四者四様が自身の答えを導き出していく姿は、すべての女性に生きるヒントを与えてくれるかも知れません。

6月13日(土)、全国ロードショー

監督・脚本:是枝裕和
キャスト:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、風吹ジュン、リリー・フランキー、鈴木亮平、池田貴史
配給:東宝=ギャガ
2015年/日本映画/126分
( c )2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

Text/たけうちんぐ