たくましい女図鑑と憎たらしい男図鑑
もし、時代劇に抵抗があるならご心配無用です。会話のスピード、テンポ共に、もはや現代劇のノリで一瞬にして共感を抱かせてくれます。
駆込む数ほど悩みがあり、自由を求める女性がいる。重苦しい表情のじょご、お吟、ゆうの3人が次第に笑顔を取り戻していく様が気持ちよく、その原因を作った男たちが苦悩する様が情けない。
特にじょごを奴隷のように扱い、精神的にも肉体的にも虐げる亭主の振る舞いは「今すぐ打ち首に!」と世の女性の気持ちを一つにしてくれる。共感以上の連帯感が映画館で生まれるのではないでしょうか。
「こういう男ムカつく!」のオンパレードで、その男たちを見返すように自由の道を歩いていく女性の力強さに快感を覚えるはずです。
また、東慶寺の「女社会」を描いていて、女だけしかいないからこそ起こりうる問題も発生。信次郎が来ただけで「若い男が!」と騒ぎ始めたり、嫉妬と憎悪が入り混じる側面もきちんと取り入れています。
現代に生きる全ての女性の背中をそっと押してくれるような、押し付けがましくない優しさが満ち溢れているのはなぜか。その理由は信次郎の憎めないキャラクターにあります。
江戸時代にも草食男子はいた?
気弱だけどいざという時に頼りになる。優しいけど時に厳しくアドバイスしてくれる。そして何より、聞き上手。江戸時代のみならず、現代の女性のハートをもがっちり掴む信次郎の魅力に溢れています。
心を閉ざしていたじょごが次第に女性としての輝きを取り戻し、一人の女性としてたくましく生きていく姿が美しい。
そして、ヤクザをやりこめながらも好きな女性には上手く告白もできない、そんな信次郎の草食男子っぷりがズルい。気の抜けた表情で「傷は治ります」と励ますその実直な姿に、じょごも思わずドキッ。愛を失いかけた女性相手だから、その不意打ちの優しさにやられてしまう人も多いはずです。