ガツンと頭を殴られるような衝撃が走る。予想を裏切る。言葉をなくす。実際、この映画に言葉はなく、字幕もない。映像のみを辿り、その怒涛の描写に目を覆いたくなる。
まるで半端なラブ・ストーリーを金属バットで叩き割るように、人が人を傷つける音がスクリーンから響き渡る。
醜い。恐ろしい。気持ち悪い。でも、これが一つの愛の形なのだと、『ザ・トライブ』は“静かに”教えてくれるのです。
本作が長編映画初監督となるミロスラヴ・スラボシュビツキーは、とてつもなく野心的な手法を世界に放った。
“サイレント映画へのオマージュ”と監督は言う。その通り、サイレント=セリフがない物語の中にプロの役者ではない本物の聾唖者をキャストに起用している。
聾唖者で結成される犯罪グループ(ザ・トライブ)に翻弄されていく青年をグレゴリー・フェセンコ、彼が虜になるグループの愛人の少女をヤナ・ノヴィコァヴァが演じる。二人とももちろん初の映画出演。
カンヌ国際映画祭批評家週間グランブリなど世界中の映画祭で話題になったのも頷ける、異質すぎるラブ・ストーリーがついに日本上陸です。
愛の正体を見破るときにあまりの衝撃に言葉を失う!
【簡単なあらすじ】
聾唖者専門の寄宿学校に入学したセルゲイ(グレゴリー・フェセンコ)は、犯罪や売春を行う悪の組織“ザ・トライブ”のヒエラルキーに巻き込まれる。手洗い洗礼を受け、殴り合いを強要され、そこで強さが認められた彼は次第に組織の中心人物になっていく。
“ザ・トライブ”のリーダーの愛人・アナ(ヤナ・ノヴィコァヴァ)は、イタリアに旅立つ夢のために売春を繰り返す。セルゲイは彼女の送迎をするうちに恋心を抱くようになり、やがて恐喝で得た金を組織に上納せず、アナに貢ぐようになる。
度々身体を重ねていく二人だが、アナの夢と組織の暴力が二人の関係を引き裂く。泥にまみれたセルゲイの一方的な愛情は、怒りと憎しみに満ち溢れていく――。