“悪役”はそれぞれの視点で変わる

『アナと雪の女王』で大きく賑わっているディズニー映画。その新作はなんと“悪役”が主演。この振り幅と挑戦に感服する。ディズニーは輝きだけでなく、その裏側の闇までちゃんと描き出すから信頼できるのです。

『眠れる森の美女』を観た人ならマレフィセントはただの“悪役”で、それ以上でも以下でもない。彼女の生い立ちも感情も知らない。物語が描かれなければ、彼女はただすべての人に憎まれるだけの存在。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと ロバート・ストロンバーグ アンジェリーナ・ジョリー エル・ファニング サム・ライリー シャールト・コプリー イメルダ・スタウントン ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン Maleficent マレフィセント 悪 眠りの森の美女 復讐 呪い 2014 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

でも、それって考えてみるとちょっと怖い。誰が本当の“悪役”なのか、この映画を観ると一発で分かる。その視点の変え方が面白くて、現実世界でも置き換えることができる。

「あいつって本当性格悪いよ」「あの子とは関わらないほうがいい」

このような噂は至る所で存在する。あくまでその人視点の“悪”なのに、あたかも真理であるように語られる。この目で確かめなきゃ真実は分からない。
視点を変えるだけで“悪”はいとも簡単に“善”に変わり、その逆も然り。それはこの映画が教えてくれることの一つです。

愛を持つ者の悪意は長続きしない

映画の冒頭、少女時代のマレフィセントが優雅に空を飛び、森の住民たちと仲良く戯れる。屈託のないその笑顔と無邪気な性格。誰もが愛するような少女を生まれつき“悪役”なんて、誰が思うだろうか。
オープニングから、名作に隠されたマレフィセントの人間性が浮かび上がる。そんな彼女が裏切られる瞬間、多くの人は強く感情移入せざるをえない。

そりゃ怒るし、そりゃ呪う。そして、呪われた親は、そりゃ怒る。
この悪循環をさーっと観ているだけで、悪意というものは連鎖し、血の雨を降らし、悲しみの種を蒔くことが分かる。

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ただ、マレフィセントはオーロラ姫に愛を注ぎ始めた。これは、本当に愛を持つ者の宿命なのかもしれない。どんなに恨みを持って悪意を抱いても、それは長続きしないのです。復讐劇なんてあっけなく終わる。その先のドラマが始まるからです。

“悪役”であるはずの彼女の物語が、愛に満ち溢れたものであると知った時の衝撃は計り知れない。哀愁と慈愛の表情をするマレフィセントの姿は、本作のみならずすべての物語で位置付けられる“悪役”の真実を想像してしまうのです。