怒ったことがない人が、ただ怒っただけ
おそらく、あなたは彼に対して不満を抱えていて、それを直してほしいから指摘をした、そして怒ったり不満を言ったりは今まで一度もなく、今回が初めてだった、と推察します。
それにしても「裏切られた」「騙された」なんて、すごい言いようですね。
「裏切られた」「騙された」という言葉が口から飛び出してしまうのは、実は多額の借金を抱えていたのを隠されていて結婚後に発覚しただとか、普通の会社員を装っていたが国家機密を狙うスパイだった…という、隠し事や嘘が引き金になっている場合だと思うんです。
今回の件をシンプルに捉えると、今まで怒ったことのなかった人が怒っただけのことですよね?
わたしだったら、「なーに勝手に理想を抱いて期待してくれちゃってんだよ」と、思わず彼に言ってしまっていたでしょう。
誰しも、本来持つ素質というのはあるとは思いますが、置かれている環境やそのときの経験によって、考え方や性格が変化していくのは当然のこと。ずっとそのままなんてまずあり得ませんし、むしろ変化が全くないのは不自然なことです。
また、本来の性格を隠していたわけでなくても、我慢の限界がきたり、怒りのゲージが溜まったりすれば、ここぞというときには新たな一面が出るものです。
それは性格が変わったということではなくて、もともとそういう一面を兼ね備えてたのが表に出ただけで、さらにはそうなるに至った相応の理由があるはずです。
おそらく、普段のあなたはとても穏やかな人なのでしょう。
そんなあなたの普段と違う一面を見て、「自分はそれほどのことをしてしまったんだ」「それだけ彼女は悩んでいたんだ」という考えが頭をよぎることなく、「裏切られた」「騙された」という言葉が出る彼は、少し心配です。
ただ、彼の「話し合えば相手が変わるなんて思わないほうがいいよ」「喧嘩を乗り越えて仲が深まるなんて幻想だよ」という考えには、わかる部分もあります。
それは、彼の言うことが正しいという意味ではなく、そういう側面もあるだろう、ということです。
話し合わないと相手は気づかないし変わらないことは前提ですが、たとえ話し合ったとしても変わらない場合はたくさんあります。
「喧嘩するほど仲がいい」というのも、それは喧嘩の種類にもよるでしょうし、喧嘩しないように感情をコントロールしたり、喧嘩に発展する前のフラットな状態で相手に伝えたり、というのも仲良しの秘訣ですよね。
でも、彼の言い方だと「自分は変わる気はありません」「そういうのは理解できません」という決意表明のように感じるので、結構厄介だなぁと思います。
信用ではない、ただの“押し付け”
わたしはこの連載の中で、幾度となく「思っていることは相手に伝えましょう」「わからないのであれば相手に聞きましょう」と、話し合いをすることを薦めてきました。
でも、それは不安や悲観が先立って話し合いをすることを躊躇している人たちに向けた言葉です。
あなたの場合は、すでに彼と話し合おうとしていますし、その彼があなたを避けたり逃げたりして、話すら聞いてくれないのであれば、正直お手上げです。
「話し合いをする気がない」と決めきってしまっている人に対して、「話し合いをしましょう」と持ちかけるのは、どだい無理な話。
だって、話し合いをする関係になるための話し合いができないのですから。
あなたは「彼の信用を失ってしまった、それを取り戻したい」と思っているようですね。
おそらくご自身でもわかっているとは思いますが、信用を取り戻すという行為はとても難しいのです。
でも、その「信用を失ってしまった」と落ち込む前に冷静になってほしいのですが、「抱えていた不満を相手に伝えた」というあなたがしたことは、そんなにも信用を失うことでしょうか?
ずいぶん、仰々しい表現だなぁとわたしは思います。
わたしがあなたの立場なら、話し合いができない、しようとすらしない、無駄だと決めつけている彼に対して、逆に信用を失うでしょう。
こちら側からの信用を失った相手に、信用してもらいたいとは思えないんですよね。
おそらく彼は、自分の中で勝手につくり上げた理想像から、あなたが離れてしまったように感じたため頑なに怒っているのだと思うのですが、そんな彼の考える“信用”って、要するに「自分の常識の範囲から一歩も出ないでください」「自分の理想通りに君があり続けてくれたら、信用が生まれますよ」ということではないでしょうか。
彼からの信用を取り戻し、これからも信用され続けるためには(こんなの信用とは言えない、ただの押し付けだとは思いますが)、彼の言う通りのあなたであり続けるしか方法はないと思います。
彼が納得する理想の女を演じ続けますか?
あなたは、これからも彼との関係を続けていきたいんですよね。
それ自体はあなたが決めることですから否定はしませんが、これまでお話ししたような考え方の彼と、今後も関係を続けていけばあなたはどうしなくてはいけないのか、わたしが考えられる範囲で具体例を挙げさせていただきます。
まず、これから先、あなたは彼に不満を言いづらくなります。
不満を抱き、それを怒りとともに彼にぶつけてしまえば、今回と同じ事態になりますからね。
彼はまた「裏切られた」「騙された」などと言うでしょうし、あなたは“失った信用を取り戻す”ために、気を揉まなくてはなりません。
そうなれば、あなたは彼の言動に対して肯定以外の感情を持つことが難しくなり、果ては自分をひたすらに押し殺し続ける日々になるでしょう。
結婚をして夫婦になると、向き合わなくてはならない問題や考えなくてはならないことは増えていきます。
長い時間悩むこともあるでしょうし、体調を崩したり、落ち込んで元気がなくなったり、感情のコントロールが上手くいかないことも、あるかもしれません。
それでもあなたは、生まれた負の感情を彼と共有することは叶わず、ひたすらに我慢して耐え、彼の理想通りの女性を演じ続けることになります。
ご自身でもわかっていると思いますが、彼を変える魔法の言葉はないのです。
はっきり言わせていただくと、あなたの「彼の信用を取り戻したい、そのためにはどうしたらいいか」という相談には、答えを出すどころか応援すらできかねます。
恋人なのに対等じゃない、上下関係が生まれている関係を、どうして応援できるでしょう。
それでも、あなたが彼と一緒にいたいという気持ちが揺るがないのであれば、彼の気の済むように、従順になるしかないのではないでしょうか。
もしも、わたしがあなたの立場だったら、彼とは別れます。
どんなに頑張っても、話し合いができない人との未来をわたしには想像がすることができないのです。
でも、わたしはあなたではありませんから、あなたの人生を決めるのはあなた自身です。
自分をひたすら押し殺し続けることは果たして幸せと言えるのか、これから先何十年も歩み寄ってくれない人間と暮らしていけるのか、それらをきちんと考えたうえで、前に進んでください。
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この連載では引き続き読者の皆さまからの恋愛相談を募集します。
最後の一歩が踏み出せない方の背中をドーン!と押すため、今にも崖から落ちそうになっている人を腕一本で引き上げるため、誰かに厳しく叱られたい方の左頬をフルスイングで打つため、わたくしポジティブゴリラは日々ゴリラらしく腕力を鍛えてお待ちしております。
Text/ものすごい愛
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※現在、多数のご相談をいただいております。
ものすごい愛さんに順次回答いただく予定ですが、隔週掲載となるためお待たせしまうこと、すべてのご相談に回答できない可能性もございます。
誠に恐れ入りますが、何卒ご容赦くださいませ。(AM編集部)
『命に過ぎたる愛なし』が書籍化!
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恋愛の地点ごとに分けられた6つの構成で、大幅加筆のうえ、10項目の書きおろしをプラス。
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