ハシャイでる人間は、尊重する必要などない
転勤族でシングルマザーの母親に育てられたユウカちゃんは、あまり友達を作らず幼少期を過ごした。そして高校時代、なんとなく始めたtwitterで大きな支持を受けるようになる。
「思ってることをただ呟いただけですね。人を見下すことは得意なんで。みんなも同じようなこと思ってたってことじゃないですか」
リムジンに乗ってハシャいでいる女たちのことをディスったツイートが、大きな話題になるきっかけだった。
現役高校生でありながら人を斬るユウカちゃんの呟きは評価され続け、高校3年の時にはコラムの依頼が来た。そして今、コラムやMC業で生活をしている。インタビューの日には、Yahoo!ニュースのトップにまで載っていた。
「こういうの大好きなんですよ。香ばしいっすねー」
ちょうど私たちの横で、女の子2人が自撮りを始めた。
何度も撮り直すその子たちの様子を見て、文字通り「ニヤリ」とユウカちゃんは笑った。“香ばしい”とは、ユウカちゃんのディスり用語。ハシャイでるセンサーが発動され、彼女は心底バカにした笑みを浮かべた。
「マジ身の程も分からずハシャいでる奴ら腹立つんすよね。一番腹立つのは、店でバースデーソング歌う奴ら。てめーの誕生日もこっちにとっては単なる平日なんだからっていう」
私は、嫌な気持ちになってしまっていた。あまりの人の悪意に触れて、嫌な気持ちになっていた。
「だって知らない人とかどうでもよくないっすか?ここにいる人たちがもし今暴走車に轢かれても、なんとも思わないっすね」
ユウカちゃんは、軽い口調で続ける。
「自分には関係ないんで、どうでもいいです。どっかとどっかの国の戦争とかも、したけりゃ勝手にやってもらって」
もしかしたら誰もの深層心理に「自分に関係ない人はどうでもいい」という思いはあるかもしれない。そのことを堂々と言うユウカちゃんは、すごく強いのかもしれない。
でも私は、目の前の楽しそうな人々を一緒に見ている人間として、「こいつらはどうでもいい」という発言は、聞いてて悲しかった。
思わず、「でもさー、ハシャいでる人を尊重したりするのはいかが?」なんて放った。
「ハシャいでる奴らを尊重できるポイントなくないですか?だって目障りじゃないですか?何を尊重すればいいんですかね?笑」
「いやお前こそハシャギまくってるからな!」とギャグ口調でユウカちゃんに伝えてみる。
真冬にノースリーブを着て、頻繁に化粧直しをして、インスタ映えするようなお店を熟知しているあなたは、調子に乗っていませんか?と。そう言ってみたら、ユウカちゃんは条件反射のような笑い声をあげたあと、反論するでもなく不満げにそっぽを向いた。え?そんな反応あります?と驚いていると、横を向いたまま続けた。
「私、何やっても成功するんですよ。ずっと成功してきたし、これからもそうだって実感があるから焦ったりしない。それが問題なんですけどね。私っておかしいんですよね」
感じたことを総称すると、なんだこいつは中2か、だった。
周りのもの全てを敵かのようにバカにして、自分は人とは違う、と言い続ける。「私っておかしいですよね」「変ですよね」という言葉がものすごく嬉しそうだ。中2じゃねーか。