恋の死を受け入れるということ

彼と別れてからというもの、毎朝、目覚めたときから涙が溢れ、それを拭いながら無理やり化粧をして出勤した。
それでもまた会社につくまでの間に嗚咽してしまい、仕事中も気が緩むと泣きそうになってトイレに駆け込んだ。
仕事が終わって会社を出た瞬間からまた泣いた。
寝る瞬間まで泣いて泣いて泣いて、あの人との未来がもうないこと、恋が死んでしまったこと、これからは違う人生を歩むと決めたことを、心と体に叩きこんだ。
地球が割れるくらい、バスタオルに顔を突っ伏して声をあげて泣いた。

すごくすごく辛かったけれど、別れというのは長い目で見れば、幸せになるための前段階である。
だからこそ、絶対にこの失恋を受け入れて、乗り越えられると自分を信じていた。
別れたその日に3年分の写真を全て消去し、連絡先も消して、もらったプレゼントの類も捨てた。

この期間の第一優先事項は、恋の死を受け入れることなので、他の余計なことはしなくていい。
下手に寂しさや悲しみを紛らわせようと合コンなんかに行くと、かえって彼の素敵だったところを思い出して余計辛くなってしまう。
余計なことはせず、ただ目の前のことだけに集中して過ごしていいと思う。

起きたら出社の準備をする、目の前の仕事をする、目の前の食事を食べる。
ただ、目の前のことをこなす以外は、泣いて過ごしていい。
多少部屋が汚くなろうが、美意識が下がろうが気にしなくていい。
恋の死を受け入れることに全力を注ぐべきだ。
部屋の掃除や合コンは失恋から立ち直ってから、少しずつやればいい。

「この人しかいない」なんてことは絶対ない

そのうちに段々と、友達とごはんに行ったり美容院へ行ったり出来るようになった。
自分の気分を上げるために、お金を使うのはいいことだと思う。
わたしは新しい靴と新しいワンピース、新しい口紅も買った。
竹内まりやの“元気を出して”をエンドレスリピートしながら出勤した。
ふとした瞬間に思い出して泣きたいと思ったら、我慢せずに泣いたが、いつしかあまり涙も出なくなった。
少しずつ元気を取り戻したわたしは、やがて別の人と恋をして、結婚もしようと心に決めることが出来た。

身も蓋もないことを言うけれど、わたしは「この人しかいない」なんてことは絶対にないと思っている。探せば、意外といる。失恋が悲しくて苦しいのは当然である。
今まで当たり前に信じていた未来が、習慣が永遠に消えてしまうのだから、悲しいに決まっている。
それでも、この人しかいないわけはないし、きちんと悲しみの海に沈み込んでしまえば、あとは浮き上がるだけなのだ。

Text/うろんちゃん

初出:2017.03.15

次回は <婚活に妥協は必要ですか? ルックスも条件もいいのに「何か違う」男性に出会ったら>です。
条件としては悪くないし、悪い人ではないけれど心が拒否反応を起こしてしまう……あなたならそんな「何か違う人」と交際できるでしょうか?うろんちゃんが「妥協なんかしなくてよかった」と振り返るのはそんな男性と婚活で出会ったときのこと。うろんちゃんがその体験から実感した、恋愛や結婚で「意思」が大切な理由とは?