東京カレンダーの綾が「無知の価値」をなくした時やるべきだったこと(2)/紫原明子

 東京カレンダー内の連載で、大ヒットした東京に住む女性たちをエリアごとに分析した「東京女子図鑑」の綾。次々と住む場所を変えていく綾を、あなたはどう読みましたか?
紫原明子さんに、綾をひも解いていただきました!

 第1回【40歳になった東カレ・綾はなぜあんなにも不幸面していたのか】はこちら

そもそも綾は不幸だったのか?

柴原朋子 東京女子図鑑 綾 AM Naud/s

 40歳になったとき、綾は再び三茶に住んでいた。
婚活サイトで知り合って結婚した夫は、別居している間に20代の後輩女子を妊娠させ、離婚直後に新しい家族を作ったという。不仲の一因が子供ができないことにあったというから、この点、確かに綾はちょっとつらい。

 一方で、仕事は引き続き絶好調だ。PR講座の講師を務めたり、働く女性のロールモデルとして雑誌に登場したりしているらしい。年収は700万以上あるようだし、一人生きていくには十分すぎる稼ぎだ。だからって「私の人生仕事だけ…?」なんて気に病む必要はない。
何しろ綾には今、「お付き合いしている人」がいるのだ。カラオケで「ずっと好きだったんだぜ」を歌った後にずっと好きだったと告白してくる、三茶住まいの古い友人だそうで。一連の流れはとんだ茶番である、三茶だけに。

 まあそんなことはどうでもよくって、離婚はしたもののキャリアも順調に積み上げ、生活の不安はまるでない上に恋愛も順調。41歳なら、まだ子供だって望めるだろう。人の幸・不幸を他人が定義することはできないけれど、今回ばかりは多めに見ていただくとして。綾があそこまで不幸になる要素、まるでないじゃん!と思うのだ。

 ……綾の謎の不幸、その理由の一つとして考えられるのは、媒体のカラーである。おそらく東京カレンダーの読者は、東京カレンダーで紹介されるような、美味しく、かつちょっとエロい店に、まだそんなに世間を知らない若い子を連れて行って喜ばれたい。あわよくばセックスもしたい、そんなアラフォー男性。
女性なんて20代、30代のうちにちやほやされて、ただでたくさんいい思いしてるんだから、アラフォーあたりで割を食って不幸になってほしい、そんな読者の無意識の心の闇に、歩み寄った可能性がある。
一流を知った顔でふかしてた綾が40代で不幸になることで、どこかスカッとした男性もいるんじゃないだろうか。

 とはいえ、私は人の美しい心を信じている。美味しい店を紹介する人が、女性に呪いをかけるようなことは決してしないだろうと、信じている!だから、自分で言っておいて何だけど、きっとこれは邪推だろうと思う。

 となると、綾が不幸になった理由として残されるものはただ一つ。書き手が、あるいは企画した人(いるとすれば)が、女の価値を「いくつもらえるか」で測る方法しか、知らなかったということだ。