童貞マインド男から夜中に「セックス」とだけメッセージがきた話/紫原明子

童貞 童貞が女の子に絡む 童貞マインド
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 先日、夜中の3時過ぎに、仕事で付き合いのある年下の男性編集者Uから、私のFacebookメッセンジャーに以下のようなメッセージが届けられた。

「セックス」

 後にも先にもこれだけ。全文がこれである。
私はもう、ほとほとがっかりした。ウンコって言って喜ぶ小学生じゃないんだから、20代半ばでさすがにこれはないだろう……。Uの普段からの振る舞いが品行方正であれば、「かわいそうに、アカウントを乗っ取られたかな?」などと優しい対応をすることもできたが、残念なことにUならまあやりそうなことだった。
時間帯を考えても、お酒を飲んでいるんだろう。酔って悪ノリして、ツッコミ待ち、叱られ待ちで、ウキウキしながらやったんだろう。透き通った目を輝かせ、どこかの居酒屋で少年のように無邪気にはしゃぐUの様子が目に浮かび、猛烈な殺意の高まりを感じた。
仕事相手に送るというのはまず大人としてダメだし、友達に送る冗談にしてもこれが面白いと思っている神経が死ぬほど寒いし、発信したものがつまらないと思われることにここまで無自覚というのも編集者としてどうかと思うし、言いたいことは山ほどあったものの、その場ではあらゆるリアクションがご褒美に変換されそうで癪だったので、このメッセージは既読をつけた上で静かに心の地獄に落とした。

 数日後、夜の四谷三丁目で思いがけずUと、その会社の上司にあたるIと遭遇した。一度地獄行きとなったUはもはや完全に見限るしかないかと思ったけれど、そうは言っても一度は一緒に仕事をした仲である。私だって今年35にもなる、年ごろの息子だっている。子どもは社会で育てようと、日頃からいろいろな場所で主張している身でもある。大人になりきれていない者をきちんと叱るのだって、社会の年長者の役目だろう。
覚悟を決めて、正座をして神妙な顔をするUに厳しく尋ねた。一体あれはどういうことなのか、セックスと言えば楽しいのか、仕事相手にその態度はどうなのか。すると、ひとしきり、はい、はいと聞いていたUがおもむろに口を開いた。

「大変申し訳ありませんでした……全く仰る通りです。紫原さんなら冗談として受け取っていただけるだろうという甘えがあったのも事実です……ただ、ひとつ釈明をさせてください。僕のスマホからセックスと送ったのはここにいるIです」