相性が何よりも大事ではないか

「家でゆっくりしている」と宣言した恋人も、さすがに正月休み最終日。家から一歩でも出ずに過ごすのはもったいないと思ったようで、午後から一緒に近所の神社に初詣に出掛け、さらには「買ったステーキ、今日の晩御飯に食べようよ」と提案してくれたのです。
よし! 正月休みを巻き返せる! 肉でワインだ! 張り切ったわたしは、慌てて肉を解凍。ところが、いざステーキを焼く段になって、恋人は「頭が痛い」と再び寝入ってしまったのです。

夜の8時過ぎまで待ったものの、空腹に痺れを切らし「晩御飯、どうするの?」と布団の中の恋人に尋ねると、「無理、食べられない」という返事。
体調が悪いというのならば、仕方がない。がっくり気落ちしながらも、「お肉をどうしようか。再冷凍はまずくなっちゃうよね」と言うと、「食欲はまったくないけど、お前がああだこうだ言うのがプレッシャーだから食うよ!」と逆キレされて大喧嘩。「プレッシャーかけてるわけじゃなくって、お肉の保管方法を相談してるだけでしょ!」「それがプレッシャーなんだ!」と喧々諤々の後、彼は再びふて寝し、わたしは卵かけごはんで夕食を済ませたらしい。

いやー、いま読んでも腹が立つ。と同時に、いくらなんでも相性が悪すぎると、失笑がこぼれました。
わたしは、相手に対して遠慮して引くくせに、不満を抱え込んでいるし、彼はわたしが不満を抱えていることに薄々気が付いていて、「俺は具合が悪いのに」と被害者意識を強めるばかりで、まったく気持ちが通じ合っていない。当時は「一緒にいて、互いを擦り合わせていけば、いつか通じ合う」と思っていたけれど、そのいつかは結局最後まで来なかった。なのに、相手を変えた瞬間に、擦り合わせなど必要ないほどに、通じ合って10年です。人と長く一緒にいるのに何よりも必要なのは、相性の良さではないだろうか。

とにもかくにも、10年前の自分に簡単にアクセスできるとは、便利な世の中です。
あなたは10年前、何をしていましたか。

Text/大泉りか

次回は<妻が週末を楽しむために「家族みんなで過ごす」という義務感を捨てていい>です。
子育てをするようになってから、何もしない週末の贅沢さを心底思い知ったという大泉さん。自分が楽しみつつ子供と一緒に過ごせる週末の過ごし方を模索します。パートナーとのモヤモヤを解消するためにやめたこととは…?