世間体か恋人との暮らしか

新しい恋人の「このタイミングで一緒に住んじゃおうよ」という申し出は、とてもありがたいものでした。一緒に住むことにすれば、もっと交通の便のいいところに住める上に、家賃も安くなる。でも、その提案にすぐには飛びつけません。わたしの中に「世間体を保つために、ほとぼりが冷めるのを待ったほうがいいのではないか」という気持ちがあったからです。

結婚未遂して破局したそばから別の男性と同棲するのは、「さすがにチョット」と、わたしの中の良識派が二の足を踏んだ。それまで、SMショーに出て人前でバイブを差し込まれたり、アナルに花を活けられたり、花火で責められてうっかり会場のスプリンクラーが作動して騒動になったりと、クソひどいことを散々してきたにも関わらず、こういう部分でわたしは常識を捨てられない長女気質なのです。

けれども一方で、破れかぶれな気持ちもありました。結婚式まで挙げた恋人と、未入籍で破局なんていうどうしようもないことをしたのだから、もう体面なんてないに等しい。そもそも体面を保とうとしたがゆえに、恋人との別れが泥沼化した苦い経験を忘れたのか。他人のことなど考えずに、自分のしたいことだけを突き通すことの大切さを知った以上、今回も自分本位で行ってしまえ……! というわけで、古い恋人との同棲から新しい恋人との同棲へとスライドすることを決意したのでした。

3度目の同棲ですが、こうして振り返ると、つくづくわたしは「人と一緒に暮らしたい人」なのだな、と思います。実家を出てからも、人と暮らしている時間のほうが圧倒的に長いのですから。