くるってしまった恋人

 通告した結果、恋人はくるいました。翌日、仕事に行ったと思ったら午後すぐに帰ってきて、仕事をしているわたしに向かって、突然「海が見たいから今から旅行に行こう」などと無茶なことを言い、「無理」と断ったら、何を思ったか今度は「ラブホテルに行こう」と言う。しかし、いくら自宅にいても、わたしは仕事をしているのです。けれど彼からすると、こんなにも傷ついている自分よりも、なぜ仕事を優先するのだと、余計に怒りと痛みを覚える。「こんなに俺が……」とわめきながら、くるった恋人は、半ば強姦のようにしてわたしを抱きました。

 いいか悪いかはさておき、恋人とセックスが出来たこと。これが恋人との関係修復のきっかけになるかもしれないと思いました。けれども、同時に深い怒りと悲しみが拭えませんでした。これまで、わたしが「セックスをしたい」という気持ちをどれだけ伝えても、散々無視していたのに、自分が嫉妬と焦燥に駆られたからといって、抱いてくるその自分勝手さ。そこにわたしへの愛情なんてひとつもありません。けれども、「もう一度好きにならせてください」と告げたわたしには、もう少し恋人と付き合う義務がある。

 こうして、最悪な2009年の夏が始まったのでした。

――次週へ続く

Text/大泉りか

次回は<婚約破棄寸前の彼がどんどんメンヘラに…2人きりの地獄の夜>です。
セックスレスの婚約者との生活を諦めた大泉りかさんは、とうとうセフレと恋に落ちてしまいました。最後通牒を突きつけられた恋人は、恋心を取り戻すべく旅行を持ちかけたのですが、結局、つまらない日々が延々と続くことを示唆するだけに終わってしまいます。