乗り換えずに別れたから残った思い
ある日、一緒にいて言い合いをするのが嫌すぎて、連絡もせずに外泊しました。3日ぶりに戻った家で「もう一緒にいるの無理じゃない? 別れよう」と告げたところ、「僕も同じことを言おうと思っていた」と返ってきました。わたしたちは、まったく同じタイミングで別れを考え、そして別れることになりました。
その時、珍しいことに、次に乗り換える相手がいませんでした。さらにいうと、こんなふうに、互いに恋心がなくなってしまったことを確認し、「もう仕方がないね」と納得して別れたのも初めてでした。だからでしょうか、わたしの中には奇妙な気持ちが残りました。それは青春を一緒に過ごした相手に対する友情です。
何者かになりたくて、いつも苛立って足掻いていたあの頃のわたしを知っている彼とは、いまでも友達として付き合っています。
もしかすると、わたしがずっとしてきた「別れるために次の男を作る」もしくは「次の男が出来るまで別れない」というやり方はあんまりよくなかったのかもしれません。なぜなら、別れる前に相手との関係が疲労し擦り切れて、相手に対してなんの魅力も感じないようになってしまうからです。むしろ、ひとりになることへの、さみしさや喪失感や後悔を受け止める覚悟をして、まだ人として相手を好きでいられるうちに別れたほうが、その後の関係はよくいられるのかもしれないと思います。
Text/大泉りか
次回は<元彼が、若い女を「自分の思う女」に誘導するよくいるオジサンになっていた>です。
「元彼との再会」は、心をざわつかせるイベント。しかし、数年前は自分よりずっと大人で何でも知っているかのように見えていた元彼は、いざ再会しても悪い意味で変わらないまま……。そのときようやく、彼がどこにでもいるただのオジサンだったことに気がつくのです。