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  • 2017.10.28

「何者かになりたい」から脱ぐ私を受け入れる20歳上の彼。でも結婚は考えられなかった

年上男性の魅力は包容力。24歳当時、「世の中に出たい」という思いを抱え、人前で脱ぐ仕事をしていた大泉さんを受けとめたのも、20歳年上の彼の包容力でした。しかし、その彼と結婚する気持ちは湧きません。その理由は……

脱ぐ理由はお金でも興味でもなく

ノースリーブを着た遠くを見つめる青緑色の髪の女性
by Ariel Lustre

 年上の男性の魅力といえば「包容力」とされています。先週書いた、24歳の時に付き合っていた20歳年上の男性も、確かにある意味では包容力に溢れていたと思います。
というのも、当時のわたしは出版社でウェブサイトの編集をする傍ら、週末はユニット「ピンクローターズ」としてSMショーに出演し、とにかく節操なくあちらこちらで脱ぎ散らかしていました。しかし彼は、それに対して一度も難色を示さなかったのはもちろん、「なぜ脱ぐの?」と問うてくることすらなかったのです。

 脱ぐ女性に対して、多くの男性は理由を尋ねたがります。「お金のため」と答えれば純粋さと悲壮感を演出できるし、「エッチなことに興味があって」というと性的な好奇心が旺盛でエロい子だと思わせることができる。

 けれども、わたしが脱いだ理由はそのどちらでもありませんでした。……いや、正しくいうと、都心部で一人暮らしをしている新卒2年目の身からいえば、月に数万円の副収入が得られることはありがたかったですし、エロいことにも、もちろん興味がありました。しかし、それだけならば、ピンサロなりヘルスなりの風俗でバイトすればいいだけのことです。そっちのほうが確実にお金になるし、エロいことだってできる。なぜそうせずに、わざわざ自分でイベントを立ち上げてまで脱いでいたのかというと、「世の中に出たかったから」、これに尽きると思います。

 当時のわたしは、何者でもありませんでした。というと、いまのお前は何者なんだという感じですけれども、少なくとも「AMで連載をしています」だとか「官能小説と、ライトノベルと、男性向けのモテ本を、何冊かずつ出しています」と説明が出来ます。けれども、当時はそういったものを何も持っていなかった。ツイッターもフェイスブックも、それどころかmixiさえもなく、自分を見つけてもらうためには、現実の社会で自己主張していったほうが、まだまだ有効な時代だったのです。

人前で脱ぐわたしと彼との仲

 人前で脱ぐわたしの「世の中に出たい」という思惑など、年上の彼氏はまったく知らなかったし、そもそも興味自体があまりなかったと思います。例えば彼の知り合いに会った時はいつも「これ、うちの彼女なんだけど、あっちこっちで脱いだりしてる面白い子」というふうに紹介されていました(そう、ようやくわたしは「面白い子」だと認められたのです!)。

 一方で、紹介された誰もが「なになにどういうこと?」とわたしに興味は持つことはあれど、「そんなに若い子と付き合ってるんだ」と驚いたり、「彼女が脱いでるって大丈夫?」と彼を心配する人はいなかった。それはようするに、わたしと彼との仲が、さして真剣ではない単なる一過性の遊びの延長だと、誰もが感じていたからだと思います。それはわたしも同じでした。

 24歳のわたしは、なんとなく30歳までには結婚するものだと考えていました。たぶんそれは、実家に帰る度に母親から「お付き合いしている人はいるの?」「結婚はするの?」「するなら30歳前にしなさいよ」と再三言われたからだと思います。母だけではなく、世間がそういう風潮でした。

 今では信じられないですけど、かつては25歳を過ぎても未婚の女性のことを「売れ残りのクリスマスケーキ」と揶揄することがありました。わたしが20代の頃は、「25歳で結婚!」という圧力は流石になくなっていましたが、25歳とされていた「売れ残り」のリミットが30歳になっただけで、「女は結婚するのが普通」「20代で結婚するのが普通」という社会通念があり、そしてわたしもその考えに囚われていました。

 しかし、わたしの中で、彼との結婚は考えられませんでした。年齢差も気になったし、彼もわたしのことをそういう対象には思っていないだろうと考えていたし、それになにより、彼とは、あまり積極的にセックスをしたくなかったのです。

――次週へ続く


Text/大泉りか

次回は<「本当はセックスしたくない男性」とセックスしたことがあるわたしに皺寄せが来た>です。
「本当はセックスしたくない男性」とセックスしたことのある女性はどれほどいるのでしょう。大泉りかさんがそれを初めて経験したのは17歳のときでした。24歳のときに付き合った男性も、きちんと好きなのにセックスはしたくなかった……。結婚までの道程を辿る闘いの記録はまだまだ続きます。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。
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