「何者かになりたい」から脱ぐ私を受け入れる20歳上の彼。でも結婚は考えられなかった

脱ぐ理由はお金でも興味でもなく

ノースリーブを着た遠くを見つめる青緑色の髪の女性 Ariel Lustre

 年上の男性の魅力といえば「包容力」とされています。先週書いた、24歳の時に付き合っていた20歳年上の男性も、確かにある意味では包容力に溢れていたと思います。
というのも、当時のわたしは出版社でウェブサイトの編集をする傍ら、週末はユニット「ピンクローターズ」としてSMショーに出演し、とにかく節操なくあちらこちらで脱ぎ散らかしていました。しかし彼は、それに対して一度も難色を示さなかったのはもちろん、「なぜ脱ぐの?」と問うてくることすらなかったのです。

 脱ぐ女性に対して、多くの男性は理由を尋ねたがります。「お金のため」と答えれば純粋さと悲壮感を演出できるし、「エッチなことに興味があって」というと性的な好奇心が旺盛でエロい子だと思わせることができる。

 けれども、わたしが脱いだ理由はそのどちらでもありませんでした。……いや、正しくいうと、都心部で一人暮らしをしている新卒2年目の身からいえば、月に数万円の副収入が得られることはありがたかったですし、エロいことにも、もちろん興味がありました。しかし、それだけならば、ピンサロなりヘルスなりの風俗でバイトすればいいだけのことです。そっちのほうが確実にお金になるし、エロいことだってできる。なぜそうせずに、わざわざ自分でイベントを立ち上げてまで脱いでいたのかというと、「世の中に出たかったから」、これに尽きると思います。

 当時のわたしは、何者でもありませんでした。というと、いまのお前は何者なんだという感じですけれども、少なくとも「AMで連載をしています」だとか「官能小説と、ライトノベルと、男性向けのモテ本を、何冊かずつ出しています」と説明が出来ます。けれども、当時はそういったものを何も持っていなかった。ツイッターもフェイスブックも、それどころかmixiさえもなく、自分を見つけてもらうためには、現実の社会で自己主張していったほうが、まだまだ有効な時代だったのです。