「前向き」「仕事も女も諦めない」を押し付けてくる女友達

おかしくなってしまった女友達

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか? mookielove

久しぶりに女友達に会った時、あきらかに「おかしなこと」になっていて、心の中で静かに驚いたことが何度もある。
突然、色気づいて美魔女化しているだとかの、その程度の問題なら、今更、さしてそう驚きはしないし「もう、アラフォーも見えてきてるんだから、好きにしたらいいよね」というくらいのもの。
そうではなく、「おかしなこと」になっていると戸惑ってしまうのは、やたらとポジティブ、そして、運命論じみたことを語りたがられる場合だ。ひどい場合だと「前世が~」だとか「生まれ変わりで~」と、天使だとか巫女だとか女神だとか突然、「実は自分すごい人だったアピール」が始まったりしてしまう。

これを「おかしなこと」になっていると判断せずにいられるか。しかし、「あなたの自意識、肥大しすぎてますけど何があった?」と思いながらも、「へー」と適当に相槌を打って流すしかない。だって、人の前世や生まれ変わりを否定するだなんて、まさに悪魔の証明だし、本人が信じているのに、否定しても、仕方がないし。

例えばこれが結婚や出産を控えて、もしくは経ての変化ならば、仕方ない。「幸せで脳内がお花畑になってる」と理解できるし、半年か一年もすれば、たいがい、自然に元に戻る。たまに戻ってこない人もいるけれど、状況が変わって大切なものが変われば、性格が変わることは仕方がない。自分が望んでいる相手と違ってしまったからといって、「もとに戻って欲しい」なんてことを思うほうがおこがましい。子供が出来てベジタリアンになった友人に、肉を食えという気はない。

そもそも、彼氏が出来て激変する女のコなんて、十代の頃から嫌というほど見てきた。自分だって、付き合った人はもちろん、仕事を始めたりして、環境が変わったことで、性格も考え方も変わったように思えるし、「また、会えるようにあったら会いましょう」というスタンスで、環境の変化を含めてゆるく続いていくのが、女の友情だ。

そういうことを踏まえて「おかしなこと」に、心配を抱いてしまう状況もある。そういう女友達に具体的に「何かあった?」と尋ねると、多くの確率でかえってくるのが「自己啓発のセミナーを受けた」というものだ。
つい先日もあった。久しぶりに会う友人は、子育てを終えて社会に復帰して、1年ほど経ったところだという。前に会ったのは、育休中だった。だから、雰囲気が変わったのは、そのせいかと思ったけれど、なんだか話していることがおかしい。

やたらと「前向きに考えることの大切さ」や「仕事も女も諦めないこと」、そして「心の持ち方次第で、どんどんといい状況に変化していく」などを説いてくるのだ。こうして書くと、そのすべてが間違っているとは言えないし、むしろポジティブでいいことのように思える。けれど、実際に会っている時に、こちらの言い分も聞かずに、こうした考えを披露され続けていると、息苦しいし、辟易する。

そもそも、結婚している女が口にする自分の夫の不満は、その多くが憂さ晴らしであって、離婚や人間関係の見直しといった本質的な改革を求めているわけではない。時には犬も食わないノロケだったりもする。義実家の愚痴も、実母への文句も、ママ友の悪口もすべては、コミュニケーションのひとつで、ポジティブよりも下世話な話題のほうが、共感をし合えて楽しかったりもするからの選択だ。
そこでいちいち、「旦那さまとセックスレスでも自信を失くすことはない。わたしの知っている例だと……けれど、それも自分に訪れた変化する時期が……うんぬん」って別に自信を失くしてるわけじゃなくって、ただたんに「夫とはまぁ、ぼちぼちやってますよ」という報告くらいのものなのに、いちいち、お説教されてはウザい。