実は心療内科に…!?

 以前メンヘラっぽい男性と付き合ったことがありました――といいましても、それまでも、メンヘルどころか、それを3周くらいを通り越して、気が狂ったような男性と付き合ったことはあったんですが、その人は陰か陽でいえば、わりと陽だったので、「行動がいちいち、ヤバくてウケる!」くらいに思っていたし、わたしも全裸に石原慎太郎の顔写真をプリントした前張りだけを身につけて、ロフトプラスワンのステージに立ち「わたしたちのオマ○コは都知事に守られてまーす!」なんてやって、某横山(元)店長に「お願いだから、都と警察を挑発しないでください!」と怒られたり、新年だからっていうんで、マ○コに筆挿して書初めしたり、大人の運動会とかいって、マ○コとマ○コで綱引きをしたり……いや、ほんの数年前にもヤリマン世界一を決めるヤリマン選手権(Y-1グランプリ)というのを主宰してみたりして、まぁ、十分に気が狂ったようなことをしているので、とにかく「おかしな人」には優しく接することの出来る傾向にあります。

 なんで、その後付き合ったそのメンヘラ疑惑のある男性が、ものすごく嫉妬深かったり、突然キレたり、ポエミーなことを言ってきたり、基本、いつもふさぎ込んでいて、身体の具合が悪いとばかり漏らしていても、「付き合い始めだから、うまく互いの距離が取れてないだけかな」とか「身体が弱くて気の毒だなぁ」とかのんきに考えていて、付き合っている最中は、メンがヘラってることに、まるで気づいていなかったのです。

 別れることになった際に、「実は心療内科に通っていた」と告白され、ようやく「あっ、この人、メンタルを病んでいたのか!」と初めて気が付いたわけですが、その時に思い出したのが、以前、その男性が「前の彼女は境界性人格障害の持ち主で、散々引きずり回された」と話していたことでした。

 その、“前の彼女さん”は、薬のオーバードーズで病院に運び込まれたり、その病院の医局から薬を盗んで脱走したりと、かなりハードコアな女性だったようで、「なんでそんな女と別れなかったの?」と、ごくフツーの疑問を持って尋ねたら「別れ話を切り出したら『雨の中に濡れてる子犬を捨てられるような人なんだね』って言うようなコで、そんな心をくすぐるようなセリフをいう女のことを振れるわけがない」という返事が返ってきて非常に驚いた。

 しかし、「その女、寒くねーか?」とでも言おうものなら、まるでその“前の彼女さん”に嫉妬しているようだし、そもそも、そんなセリフに心を響かせているのって。しかし、なんだかんだ、こういうジュリったセリフに響く男は存在するのである……ということを、ひとつ学んだ気になりながらも、とにかく、その彼は、“前の彼女さん”にさんざ引きずられたあげく友人に「お前、頭おかしくなってるよ」と言われる状態にまで達したというのです。

 確かに自分を振り回す恋人と一緒にいると、心が休まる暇なくだんだんと疲労して、心が病んでいくというのは当然のことでしょう。わたしもその彼と付き合っている時は、朝まで飲みに行ったことに、グチグチと長時間に渡って説教を食らって逆キレしたり、男友達と連絡を取っていることに不満を持たれて、「は? 友達を捨てろっていうわけ?」と大喧嘩になったりと、かなり疲労の日々でした。相手が泣いて喚くのに、最初は冷静に対応しているものの、埒があかずに、同じように対応してみたらどうかと考える。なんで、こっちも泣いて喚くと、あっちは今度は暴れる。だから、こっちも暴れてみる……という負のメンヘルループ。その時は、恋人と理解し合うために、必死に努力しているつもりだったけれど、今となれば、追ってくる「それ」からは逃げるしかない、とわかるんですけどね。

 しかし、「それ」と関わった以上、もしかしてわたしはすでにうつされていて、今だ、うつされっぱなしでないとは、決して言えない……そんなことを、映画鑑賞後に考えてさらにヒヤッとしたのですが、『イット・フォローズ』は映像もすごくオシャレですし、「それ」もものすごく怖くて、楽しめる映画ですので、興味のある方は映画館へどうぞ。そして、その彼を含むすべての、心が苦しい方々に、早く平穏が訪れますように。

…次回は《絶対に手放せないものを犠牲にしてまで『追剥ぎ男子』と一緒にいれるのか。》をお届けします。

Text/大泉りか