この映画は実在する物理学者・スティーブン・ホーキング博士の大学時代から近年までの長きに渡る人生を描いた映画です。彼一人の人生というより、彼と彼を支えた妻・ジェーンとの二人の人生を描いた映画です。
難病ALS(筋萎縮症性側索硬化症)を患い、余命二年と宣告されながらも73歳になり、現在も研究を続けるスティーブン・ホーキング。身体の自由が利かなくなり、何一つ自分でできなくなっていくスティーブンはどう生き、彼を支えると決心した妻・ジェーンは彼にどう接したのかが描かれていきます。
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実在する天才物理学者の生涯を描いた『ビューティフル・マインド』は、マインド(精神)の病気とそれを支える妻を。そして、本作『博士と彼女のセオリー』はフィジカル(肉体)の病気とそれを支える妻を描いています。
『ビューティフル・マインド』は、主人公ジョンから妻が一度離れていたことが伏せられていますが、『博士と彼女のセオリー』では病気を看病する彼女の苦悩と離別も描きます。しかし、マイナスには描きません。それが凄い。
原題”The Theory of Everything”は、邦題『博士と彼女のセオリー』へと一見よくわからないものに。しかし、映画のラストを迎えた時、「彼と彼女が途中で別れても生きた証(=セオリー)」がしっかりと描かれています。それは何か。それが示され、そこからエンドロールへ突き進む約1分の展開が強烈でした。
身体は鳥肌、目には涙、心は温かく。そんな状態でエンドロールを見送りました。デートムービーとしても最適な素晴らしい作品であります。