起承転結でいうなら好きなのは転から始まるようなセックス

佐々木あらら 初体験 処女 童貞 卒業 エロ短歌 Valetina Manjarrez

 美人と付き合うのがとても苦手でした。

 なぜか無愛想になってしまうんです。

 美人を憎んでるとか、美人につっけんどんにすると異様に興奮するとか、幼少期に美人の鬼にさらわれて性的ないたずらをされた過去があるとかではありません。

 自己分析するに、自分に自信がなかったからだと思います。

「あの子みたいな美人がなんで僕なんかと付き合うんだろう?」という疑念が払えないんです。美人に「好き」と言われても、その言葉がどうしても信じられない。自分がそんなに人に好かれる人間だと実感できないからです。そればかりか、後ろ向きの脳細胞が疑惑の仮説を検証し始めます。

【美人局説】彼女は僕の財産を狙っている巨大組織の秘密工作員である(財産なんかないのは棚に上げておく)

【勘違い説】彼女にはマッドサイエンティストの手により強力な催眠術がかけられており「どうでもいい男をモテ男だと思い込ませるとヒトの雌と雄はどういう行動をとるか」の人体実験が行われている

【同姓同名説】むかし片思いをしていた男の子のことが忘れられず、たまたま同姓同名の男に恋をしてしまった

【ワケアリ説】実は元男性。その秘密を他のいい男には言い出しにくく、なんとなくそういう事情を気にしなさそうな男を選んでみた

 そんな風に悩み始めると一緒にいてもどんどん笑顔がこわばるようになるし、どんなひとことにも裏の意味があるんじゃないかと疑ってかかるようになる。「ころっと引っかかったな、この単純野郎」と心の中で嘲笑されてたら悔しいから、こっちからは絶対デートに誘わない……。

 バカだったと思います。

 いろいろと悩み抜いた末に出る結論は、いつも「あなたみたいな美しい人は、そこらへんにいっぱいいる僕よりいい男とつきあうべきだ」でした。

 冷静に考えれば、美人だろうとそうじゃなかろうと人は人のことを自由に好きになるものだし、逆に、美人じゃない人だって美人局やら勘違いやら同姓同名やらワケアリやらの可能性があるかもしれない。結局のところひどい偏見なんです。

 まあ、美人だろうと誰だろうとガンガン付き合うようなタイプだったら、今ごろAMじゃなくてもっとマッチョな男性誌に「性豪伝説」みたいな連載をして、今よりモテない男になってたかもしれないから、結果的には良かったのかもしれないけどね。

 あ、そうそう、年をとった今は、どんな美人とも「きっと僕の欠点をいいほうに勘違いしてくれてるだけに違いないけど、真相に気づくまでの短い時間だけでも僕なんかに構ってくれるんだからありがたいことだなあ」と手を合わせつつお付き合いするようになってております。

 さて、そんな勘違いばかりでできた恋愛怨霊エピソードが今回もたくさん届きましたよ。今月は「職場恋愛」編。