「良妻賢母」は童貞の見た夢

 心ある夫たちは「奥さんはテキトーでゆるゆるな方がいい、機嫌よく笑顔でいてくれるのが一番だから」と言います。
良妻賢母プレッシャーに囚われていると「私はこんなに頑張ってるのに!」と被害者意識や見返り要求が生まれる。それで不機嫌になって夫婦仲がギスギスするなんて、バカらしいではないですか。
無理しないと続かない関係はいずれ破たんします。パートナーはお互い無理せず機嫌よくいられる相手が一番。

 という現場の実感からすると、メディアの提唱する「結婚しても女でいることを忘れず、夫に欲情される存在でいろ」系のメッセージもどうかと思う。
「下着を見える場所に干すな」とか言うけど、だったらどこに干せばいいんだ。
私の知る限り、そんなルールを実践している夫婦は1組もいません。

 セックスのためにエロいムードの演出等もしてないし、女豹のように迫ったりもしてない。
実際、周囲のセックスフルな夫婦はエロくない。
「セックスは特別じゃなく日常的な行為」「食事や入浴のような感覚で気軽にやってる」「部屋着や下着もテキトーだし、風呂上りは裸で歩くけど?」という彼ら彼女ら。
そんなふうに肩の力が抜けているから続くのでしょう。

 メディアの提唱する理想の妻は「良妻賢母かつ男に欲情される女」「昼は淑女で夜は娼婦」。
そんなのは童貞の悪い夢みたいなもので、非実在なのです。

「疲れた男を癒す聖母になれ」なんてのもありますね。幸せな結婚をしたければ、そんな幼稚で都合のいい幻想を抱く男を選ばないのが一番でしょう。

 メディアはマジメで努力家の女性たちに「今のままじゃダメ!もっと綺麗に!もっと完璧に!さもなくば結婚できない!」と叫びます。そんなスパルタ指導に疲れ果てた彼女らは「もうこれ以上、頑張れない…やっぱ私には結婚なんて無理だ…」とガックリと膝をつく。

 でもそれはメディアに洗脳されているのです。
「私が結婚できないのは女磨きが足りないから」と考える女性に足りないのは、出会いです。
伴侶とは、おせんべいをパキッと割った片割れ。相手に合わせて自分を無理に削らなくても、ピッタリと合う人。
そんな伴侶を探すべく、「女磨きに励んで待ってれば王子様が迎えにきてくれる」という幻想を捨てて、出会いを増やす努力をしましょう。

 そしてメディアの情報を鵜呑みにせず、既婚者の生の声を聞いてください。
「筑前煮をキュートに盛りつけていたら運命の彼に出会えた」なんて人はいないはず。

 リアル妻たちは「夫とは長い付き合いで今さらトキメキもなかったけど、とにかく一緒にいて楽だったから結婚した」「夫は全然タイプじゃなかったけど、試しに付き合ってみたらしっくりきた。男として好きなタイプと結婚して合うタイプは違うよね」と言います。

 ドラマチックな出会いから大恋愛の末に結ばれたカップルは見当たらず、仲がいいのは「一緒にいて楽」「気をつかわずにすむ」と口をそろえる友達夫婦。

 友情は恋愛感情と違って、冷めないし飽きません。
男として好きな相手より、人として好きな相手の方が嫌いにならないし、期待値が高すぎないぶん「まあ夫婦つっても他人だしな」と違いを面白がれる。
あとウンコを漏らしても「まあ漏らすよな」と平静でいられるのだと思います。

 ここまで読み返して、私の文章ってほんとキラキラしてないなと呆れました。ウンコという単語が頻出するし、夢がないにもほどがある。

 でもやっぱり周りを見回すと、ロマンチストよりもリアリスト、プリンセスよりもソルジャータイプの女性が幸せになってます。
頭にティアラ&薬指に指輪じゃなく、頭にロングホーン&左手にサイコガンで、人生という戦場を戦う彼女たち。
結婚しようが結婚しまいが、そんな女性が世間やメディアの作った幸せじゃなく、オリジナルの幸せをつかむことができるのでしょう。

Text/アルテイシア

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