少女マンガに登場するステキな王子様に胸をときめかせていたあの頃――いつか自分も恋をしたい。そんな風に思いながら、イイ男とは何か、どんなモテテクが効果的なのか、少女マンガを使ってお勉強していたという人も少なくないハズ。
時は流れ大人になっても、少女マンガによって植え付けられた恋愛観や理想の王子様像は、そう簡単に劣化するものではありません。むしろ王子様の亡霊に取り憑かれて、リアルな恋愛がしょぼく思える人もいたり? この連載では、新旧さまざまなマンガを読みながら、少女マンガにおける王子様像について考えていきます。
そのしんどさを救ってあげたい…!
『関根くんの恋』
この連載は、AM読者のみなさんに、「このマンガの王子様ステキだよ!推せるよ!」ということを全力でお伝えするものだが、担当Oさんから「そういえばトミヤマさんが個人的に好きなマンガの王子様って誰なんですか?」と聞かれて、我に返った。そんなこと、訊かれたことがなかったし、話したこともなかった。
これまで取り上げた王子様たちのことも大好きだし、心の底からオススメするが、もし「誰がなんと言おうとわたしの一番じゃい!」と思う王子様について語っていいのなら……やはり『関根くんの恋』を挙げたいと思う。
「世界は幸福な人間と不幸な人間とでできている/関根圭一郎(30)を端的に云い表すなら/「罪深い無知」と「かなしい完璧」/そんな/稀に見る残念な男の一部始終/とくとご覧あれ」
こうした語りによって物語は幕を開ける。主人公の関根くんは、イケメンで仕事もできる完璧人間……のように見えて、実際は、究極の器用貧乏。何をやってもそこそこのレベルまで行けてしまうがゆえに、結局何にもハマれない。なんとも哀しいやつである。