少女マンガに登場するステキな王子様に胸をときめかせていたあの頃——いつか自分も恋をしたい。そんな風に思いながら、イイ男とは何か、どんなモテテクが効果的なのか、少女マンガを使ってお勉強していたという人も少なくないハズ。
時は流れ大人になっても、少女マンガによって植え付けられた恋愛観や理想の王子様像は、そう簡単に劣化するものではありません。むしろ王子様の亡霊に取り憑かれて、リアルな恋愛がしょぼく思える人もいたり? この連載では、新旧さまざまなマンガを読みながら、少女マンガにおける王子様像について考えていきます。
家庭の中にだって王子様はいる!『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻の方が稼ぐので僕が主夫になりました』
今回ご紹介するマンガは、犬山紙子さんの夫である劔樹人さんのコミックエッセイ『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻の方が稼ぐので僕が主夫になりました』です。
えっ!? それって、少女マンガでもなければ、王子様でもないのでは? と思ったそこのあなた。本作が少女マンガじゃないのは100%認めますが、「王子様でもない」の部分は訂正させてください。
劔さんって(失礼を承知で書きますが)見た目こそゆるキャラっぽいですけど、3次元の男のなかではかなり王子様感のある方なんですよ。ですからまずは騙されたと思ってわたしの話を聞いてくださいよ……。
犬山・劔夫妻は、基本的に犬山さんが外で稼ぎ、劔さんが主夫として家事を担当しています。共働き家庭がかなり増えてきたとはいえ、いまの日本ではまだ「男は外、女は内」を基本型としている夫婦が多いですし、女に養われる男は「ヒモ」とみなされてしまいがち。正直なところ、まだまだ主夫への風当たりは厳しい状況かなと思いますが、劔さんには、悲壮感とか自虐的なところがあまりないんですね。
「ヒモと言われたら気にするけれど、それでも我が道を行く」
……どうですか、この弱気と強気のミックス感。世間体なんてどうでもいいとまでは言わない(言えない)、でも、信じた道を突き進むぜ的なポリシー。
実際そんな男の心境って、少女マンガにもよく表れてますし、みんな大好物じゃないですか。ふだんは強気だけど風邪をひくといきなり弱る男子とか、ツッパリなのに捨て猫を拾ってしまう男子とか、劔さんの言ってることって、構造的にはよく似ているんですよ(笑)。強気と弱気が混在していることは、少女マンガの王子様にはなくてはならない条件です。