夫婦の価値観が合わないからこそできた特別な家族旅行の思い出……?

結婚は価値観が合うことが一番大切

夕焼けに浮かび上がる家族旅行者のシルエット by Pixabay

結婚生活で一番大切なのは、価値観が合うことだと思っています。なんせ価値観が違うと、何かあるごとにいちいち擦り合わせが必要となるので、非常に疲れます。

もちろん、何が何でも「自分の価値観のほうが正しい」とパートナーを従わせるタイプならば、相手はさておき、本人は何も困らないかもしれません。逆に、主体性を人に委ねることにまったく抵抗がない人ならば、他人の価値観に沿って生活することに、悩んだり苦しんだりすることもないかもしれません。

けれどもわたしは、相手の価値観を尊重したいけれど、自分の価値観も曲げたくない。そして対立した場合は、相手に譲ってしまうことが多いくせに、ストレスは溜まる気質……。というわけで、価値観が合わない相手と過ごすことは、なるべく避けるようにしているのです。

旅行で際立つ価値観の違い

ということを思い出したのは、先日、とある夫婦と会食をしたときのことです。相手方の妻が、彼女の夫が席を外した隙に、声をひそめてこんな愚痴を漏らし始めたのです。

「この間、夫と息子と一緒に台湾に行ったんだけど、ひどいのよ!」

いったい何がどうひどいかと尋ねると、彼女はこう続けました。

「例えば、朝市に行くでしょう。珍しい果物の露店とか、見たことないローカルフードの屋台とかがたくさん並んでるから、いちいち気になるじゃない? わたしと息子は、もう雰囲気だけで楽しくて、あちこち見たい気分になってるんだけど、あの人ってば、さーっと速足で過ぎて行っちゃうのよ。『ちょっと待って。もっとゆっくり見たいんだけど』なんて言っても聞く耳も持たなくて」

わたしは常々、旅先では、価値観の違いがさらに際立つと考えています。どんなホテルに泊まるのか、旅先でどうやって過ごすか、ご飯は高級店で食べるのか、それとも大衆的な食堂に挑戦するのか……。なかでも「歩き方」が合わないというのは、なかなか根本的な価値観の問題。正確には、一番の問題は「ちょっと待って」と言っているにもかかわらず、耳を貸さずに歩き続ける夫の態度にあると思うのですが、とにもかくにも、一事が万事この調子だったというのです。

そこで妻は、もっと快適な街歩きの方法を考えたそうです。まず、観光したい目的地周辺に着くとカフェを探し、そこに夫を配置。そしてその間、自分とお子さんとで興味の赴くままに街歩きをする、という方法。こうして、彼女は自分の価値観に沿った旅を楽しむことに成功したのでした。

しかし、謎です。夫はその旅行、楽しかったのだろうか。いったい何がしたくて、妻子と旅に出たのか。「家族旅行」なのだから、当然自分も参加するものだという義務感でついてきたにしても、それはそれで楽しめばいいのに……。

いや、これこそが価値観の違いでしょう。いくら露店に並んだ肉や野菜を眺めたところで、旅先だから買うわけではないし、屋台のローカルフードは衛生的に不安があるのかもしれません。そもそも食べたことのない料理を口にしたくない人もいる。その夫がどんな価値観を持っているかは伺い知れませんが、それは彼の価値観なのです。

そんな話を聞いているうちに、彼女の夫が戻ってきました。