「好き=結婚」のかわいい思考回路
で、まずご紹介したいのは、主人公の「桐山零」。家族を突然の事故で亡くし、天涯孤独となった彼は、親戚内に親切な引き取り手を見つけることができず、生きていくために将棋の道を選ぶことになります。それは、亡父の友人だった棋士「幸田」の家に入り、内弟子として暮らすこと。しかしその日々は、かなりキツいものです。幸田の実の子どもたちよりも将棋が強くなったことで、いよいよ家に居場所がなくなった零は、ひとり暮らしを開始。そこでようやく、自分を家族のように扱ってくれる川本家の三姉妹と出会います。
親を亡くしたことで、同世代の子たちよりも早く大人になることを強いられた零ですが、子ども時代の積み残しによって、急にあどけない部分が覗いたりもします。というか、そのギャップが、この王子様最大の魅力だと言っても過言ではありません。
とくに10巻以降の零は、恋する男子の顔と、強くてかっこいい棋士の顔を交互に見せてくれて、本当に目が離せません。
川本家の次女「ひなた」を好きだと気づいてしまった零は、いつかひなたと結婚することを目標に設定するのですが、愛が暴走してしまって、肝心の恋愛過程をすっ飛ばしています。
「僕は/ひなたさんとの結婚を考えています」
「あ いえ/付き合ってません/——というか/まだ伝えていないので」
「大丈夫/これから時間をかけて/説得します!!」
……そう、全ては零のひとり相撲。しかしこれが、彼のワガママに見えず、むしろ超絶ピュアな恋心に見えるのは、彼が子どもの心でひなたを好いているから。零くんよ、好き=結婚、という思考回路が小学生みたいで可愛いぞ。
いつものわたしなら、こういう男子を見ると「相手の気持ちも考えろや~!」と思うところなのですが、零のことは100%許せる。むしろひなたちゃんを説得したい。あいついい奴だよ、と。だって、プロ棋士としてやっていくことだけを考え、打算でパートナーを選ぶ人だっているだろうに、零は、ひなたのしあわせのためなら、川本家の厄介ごとすらまるごと引き受けようとするんですよ? そんな高校生いますか? しかもすでに年収700万超えですよ?
この胆力、大の大人だって、そうそう持ち合わせているもんじゃない。見た目はまだまだ子どもでも、親分とか頭領とか呼ばれる人の腹の括り方です(かっこよすぎ)。