「そのまま」しか求めない、欲のない王子

光正という王子様のすごさは、木絵に文字通り「そのままであること」しか求めていない点にあります。
彼女が「もっさい」「とっちゃん坊や」という言葉で表現されていたりすることからもわかるのですが、とにかく幼くてイケてない。結婚適齢期の女子としては、かなり「意識低い系」と言えます。

しかし光正は、もっと化粧やオシャレに気をつかえとも言わないし、料理や家事をちゃんとやれとも言わない(そもそも高台家にはメイドとコックがいるので妻は家事をやらなくてよい)。また、マザコンではないので、母親のような包容力も求めていません。木絵の家柄なんかもどうでもいいみたいです。高台家は名家ですから、本来であれば、高スペック女子の中から、わりと性格のいい女子を選んだ方が人生はイージーモードなのに、それをしない。

とにかく妄想好きで、ぼんやりさんで、他人とギスギスすることのない木絵が好きで仕方がない。その意味で光正は、多くを望まない王子様、こんなにハイスペックなのに恐ろしいほど欲のない王子様です。

ちなみに、弟の和正も、あまり多くを望まない王子様だと言えるでしょう。
小さい頃からよく知っている「純」のことが好きなのに、ちっとも距離を詰められないのは、純がずっと光正に片思いしていたのを知っていたということもありますが、やはり、自分がテレパスであることで、好きな人を苦しめる可能性があると考えているから。

本当は好きだと伝えたいのに、その気持ちを押し込めて、なんでもないような顔をしてしまう和正は、兄以上にいじましい存在です。