不良っぽいあぶなっかしさと憂い顔の二面性王子様・春山

 本作では、万引きとかはするけれど、ギリギリ普通の中学生の側に踏みとどまっている主人公「和希」が、徐々にヤンキー化してゆきます。
ですので、ふつうの読者が和希に感情移入しながら読むと、高確率で心がヤンキー化するでしょう。

 個人的な話で恐縮ですが、中学生のわたしは『ホットロード』をはじめて読んだ時、和希になりたすぎて、オキシドールで髪の色を抜こうとしたことがあります(結局、一度やったぐらいでは何も変わりませんでしたが)。
わたしには、愛する女のためになら「いつだって死ねる」とか、ある日突然「おまえ オレの女にならない?」とか言ってドキドキさせてくれる王子様などいないというのに!

 本作の王子様は、和希の交際相手「春山」です。
実家を出て、ガソリンスタンドで働きながら暴走行為を続ける不良男子(物語のスタート時はなんと16歳)。

 暴走族という組織に属しながらも一匹狼的で、カッコイイことはカッコイイのですが、その前にとてもあぶなっかしいのが特徴。
たったひとりで大勢を相手に喧嘩をしたり、下手したら死ぬとか警察に捕まるとかいった行為を平気でやったり。
そのくせいきがっているだけガキとは少し様子が違って、なにか深く考え込んでいるようなところもある。憂いのある不良なのです。