彼が成長し、世間の方へやってきたとき、
あなたの妄想が爆発する

 ところで、本作のラスト近くで春山に「あること」が起こり、それをきっかけに今まで散々やってきたあぶなっかしい行為を自粛するという展開があるのですが、不良少年を卒業し、一気に大人びていく春山から、なにやら色気のようなものが出ていることが気になります。

 そしてこの色気に反応するのは、和希になりきった「少女としてのわたし」ではなく、現実を生きているあなた自身だろうと思うのです。

 まだ若いのに、酸いも甘いもかみ分けていて、いざとなったら鉄パイプで暴漢から守ってくれて、普段は愛とか恋とか言わないくせに、子猫にだけそっと恋心を打ち明けてしまうような男が、暴走族を引退して、世間の方へとやってくる。

 世間の荒波を乗り越えまくっているお姉さんとして、手ほどきしてあげたいという気持ちがうずきます。
「和希ちゃんを好きなままでもいいから、ね?」とか言いたい……そんな妄想がとめどなくあふれてしまうほど、この作品に仕掛けられた「あぶなっかしい王子様の成長」は、魅力的なのです。

Text/トミヤマユキコ

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