人はわかりあえないから

いくら相性がよくても、価値観が似ていても、他人は他人である。完全にわかりあえることはないし、すれ違いもあるはずだ。2年付き合った恋人と別れた友人は「どんなに話してもわかりあえないことがあってショックだった」と話していたが、そもそもよっぽど相性がいいカップルだったんだろうなと思った。

「私たちって相性が悪いね」と話している我々にとっては、わかりあえないことは当然のことである。だからこそ言葉を尽くして説明するし、互いにわかろうとするし、それでもわからなければ、「まぁ相性悪いから仕方ないな」と思うことができる。その繰り返しが尊重というものではないか。

今になって考えれば、「おれたち相性いいよね」と軽々しく言ってくる男にモヤモヤしていたのは、「ねえ、私のこと本当にわかろうとしてる?」という疑念があったからだ。「相性いいよね」という言葉で、なんとなくうやむやにして、わかりあうことを放棄されては困る。だったら相性が悪い方がマシ。むしろ好きな人とは相性の悪さを観念し、それでもわかりあおうと手をつなぎ、地獄の果てまで付き合っていきたい。

Text/雨あがりの少女