「出来る私は出来なくなりたい」自分を降格させたい夜/長井短

ちょっと一旦くだらないこと書きたい

「さよならありがともうマジでバイバイ」が始まって半年くらいが経ちましたが、楽しんでいただけているでしょうか?毎月自分の恥ずかしい思い出を検索しまくるっていうニュータイプの羞恥プレイをしているわけですが、今月は思ったのです。「ちょっと一旦くだらないこと書きた〜い」たぶん、夏がそうさせたのだと思います‥というわけで今月は番外編で、マジでくだらないことを書きます!!ちなみに今の時点で編集さんの許可はとっていません!賭けだな!!!

今まで通りには無理だけど、それでも少しずつ居酒屋に飲みに行ったり、旅行に出かけたりできるようになってきた2022年。みんなはどんなふうに過ごしてきましたか?もうまもなくハロウィン〜クリスマスっていうドチャラ月間に突入するわけだけど、ちゃんと準備運動しとけよ?この数年で失った肝臓の力を侮るな?私はというと、完全に肝臓が職務放棄を始めてきたので以前より酒の量が減っています。しかも外食をできる回数が減ったからか、以前よりもきちんと食事を楽しみたいみたいな気持ちもあって浴びるほど飲むことがなくなりました。そうなると何が起きると思う?近隣の席で酒を飲む他人の会話を、より高い精度で聞くようになったのです。全角度から聞こえてくる人々の話し声の中で、一際大きく私の耳に響いた声。それは20代中盤くらいのよく通る女性の声でした。まずは登場人物を紹介しましょう。

町娘の高すぎるスキル

町娘ー20代中盤、気が利く快活な女性、姉御肌

一目置かれ男ーなんか堂々としてる人、ずっと普通のことを言っている

しぽ兄ー3人で来ているのに一人だけしっぽり飲んでる男、ほぼ喋らない

3人ともとても仲が良さそうで、特に上下関係も感じさせない至って平和な食事会でした。なぜ、こんな普通の食事会が私の気を引いたのか。それは、町娘の高すぎるスキルのせい。注文から卓上の整理、話の聞き方、話題提供のタイミング、全てが完璧なのです。追加注文をするときは、あくまで「私がもっと飲みたい食べたいから」という雰囲気を出す。これは技術点が高いムーブ。「わがままで場を持たせる」という高等技術ですね。「私がしたいから」を演出することで、みんなが「まぁ君が飲みたいなら」と思えるようになる。責任の所在が自分でなくなった時、人はリラックスするのです。その甲斐あってか、追加オーダー後の会話はより一層盛り上がっていました。
そして卓上の整理。これは気遣いであると同時に、時間潰しとしても有効ですね。町娘、一目置かれ男の話があんまりピンと来なかったようです。

「俺さ、ほんっとに、マジでほんと、ほんっっっとにさ!本当に思うんだけど」

念押しが慎重すぎて牛歩のようなトーク。これをただ正面から聞き続けるのは確かに辛いものがあります。そこで、町娘は一気に卓上を片付けにかかります。

「うん、うんうん、うん、あ、飲む?うんうんうん」

相槌の合間にしぽ兄への声かけも忘れません。(ちなみにしぽ兄はしっぽりしているので返事も無音でした)一目置かれ男がようやく本題に入った時にはすっかり綺麗になった卓上。町娘はそこに肘をついて、ゆったり話を聞くのです。芸術点が高いですね。

一目置かれ男の話が済んだところで、一度場は静寂に包まれます。それぞれが頭の中で話題を考えているような、微かに緊張感のある間。皆さんなら、この場をどう動かしますか?私なら、焦って変な話を始めてしまうという初歩的なミスを犯しそうですが、町娘は違います。

「このシュウマイって、どんなシュウマイなんですか?」

店員への鮮やかなノールックパス。二人の興味は一気に店員へ向きます。この店のシュウマイは少し特殊なシュウマイなので、説明は聞いていてとても面白いものでした。町娘、あなたはそれを知っていて、わざとパスを出したのですか?一目置かれ男の少しディープな話から、食べ物の話に移行すること。そこに店員さんも巻き込むこと。見事な箸休めです。もしここで町娘が、続け様にディープな話を始めたら、おそらくこの飲み会は「人生相談」がテーマになってしまったでしょう。それを、見事なパスまわしで回避。場にもう一度軽さを提供したのです。町娘‥あんた凄いよ。とんでもないバランス感覚だよ‥私弟子入りしたい!