恋とヴァカンスのために生きているフランス人

 さて、今月のテーマ「食」についてお話しましょう。

 夏の間、クーラーが必要ないパリでは誰もが夜も窓を開けて涼みます。
日本ほどの熱帯になることはほとんどないですしね。

 そこで近所から聞こえてくるのが「ポンッ!」というシャンパンなどの発泡酒を開ける音。
この音を聞くと、スーッと力が抜けてなんだか和むんですよね。この音が聞こえるほど街が静かなヴァカンスシーズンだな、と感じるのと、発泡酒を飲むってことは「さぁ、ご飯を楽しむぞ~」というフランス人たちのワクワクが伝わってくるからです。

 そう、パーティーは飲み物とアペリティフから始まります。友人宅のパーティにお呼ばれされた時もワインなどの飲み物と一緒にです。こういうとなんだかとってもオシャレに聞こえますが、カジュアルにチップスやナッツをつまみながら一杯やっておしゃべりというだけのもの。いよいよメインが登場して食べながらおしゃべり、デザートが運ばれてきて、お腹一杯になってもずーっとずーっとおしゃべり。フランス人はなかなか家に帰りません。

 これは公園のピクニックでも、レストランでも、友人宅でもどこでもフランス人はじゃべりっぱなしのエンドレス、パーティーに参加している日本人なんかが「そろそろ、おいとまします」と言わない限り、多分朝まで続くのだと思います。

 こういう彼らの姿をみると、「食」は「おしゃべりの飾り」でしかなくて、しゃべりたいがためになにか理由をつけて食べてるだけじゃないのかな?とすら思うのです。

 フランス人は、食べるためというかおしゃべりするため、そして恋してセックスするため、思いっきりヴァカンスを楽しむために仕事をして生きている。そうとしか思えないほど愛すべきとっても人間らしい人種だなとつくづく思うのです。

Text/中村綾花