#MeToo運動をはじめ、以前よりも女性が女性であるが故に受けた被害や不遇を声に上げやすくなった現代。その原点ともいえる、ウーマン・リブ運動を皆さんは知っていますか? ウーマン・リブとは1960年代から1970年代にかけて、世界的に勃発した女性解放運動のこと。「あいち国際女性映画祭2019」での上映を皮切りに、現在全国で順次公開中の吉峯美和監督によるドキュメンタリー映画『この星は、私の星じゃない』は、日本におけるウーマン・リブ運動を先導した女性・田中美津さんを追った作品です。
10月26日公開、上映後には渋谷ユーロスペースにて社会学者の上野千鶴子さんや作家の雨宮処凛さんらによるトークイベントが開催されました。11月2日には女優の渡辺えりさんを聴き手に迎え、映画のメインキャラクターである田中美津さんが登壇。今回は、映画の内容とトークイベントの模様をご紹介します!
田中美津さんの歩み
現在、鍼灸師として働いている田中さんは、幼い頃に両親の元で働いていた従業員からチャイルド・セクシャル・アビューズ(子どもへの性的な虐待)を受けた経験があります。その事実を知った田中さんの母親は、加害者の男性に激怒。一方で、受けた行為にときめきを感じてしまった田中さんは罪悪感に苛まされ、「なぜ私の頭の上にだけ石が落ちてきたのだろう。この星は、私の星じゃない。だから守られないんだ」と呪文のように何年も唱え続けたのです。
当時、男性の性欲を満たすための存在か、もしくは家庭を守る母親としての存在かの二択だった女性の立ち位置。女性蔑視が平然と蔓延していた時代で、そうではない女性の生きる価値があると田中さんは立ち上がりました。その勇気が、日本でウーマン・リブ運動が広がった1つのきっかけとなったのです。1970年に“便所からの解放”という文章を発表した田中さんの元には、同じ思いを抱えた女性たちが集結します。その後、田中さんは「ぐるーぷ闘うおんな」のリーダーとして精力的に活動。仲間たちと共に、ウーマン・リブの活動拠点である「リブ新宿センター」を設立し、その場所は悩める女性たちの駆け込み寺として機能しました。
田中さんが行ってきた活動の内容だけを聞くと、カリスマ性があり、闘争心のある厳格な女性像を想像するかもしれません。しかし、映画内でも触れられたように「女性の解放よりも、まずは私自身の解放を」と語る田中美津さん。吉峯監督が2015年から4年間に渡って撮影した映画には、運動家のイメージを覆す、自由で嘘のない笑顔と感性に溢れた田中さんの姿が映し出されています。
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