初デートの店選びは難しい。私が選んだのは「ビール100円の例の居酒屋」

そういえば、夫との初デートってどこだったっけかな、と思い出してみたら、まさかの新宿歌舞伎町にあるビールが100円でお馴染みの例の居酒屋でした。

SNSでは定期的に「初デートであの店に連れて行くのは……」というような話題が炎上しています。初デート……そういえば、夫との初デートってどこだったっけかな、と思い出してみたら、まさかの新宿歌舞伎町にあるビールが100円でお馴染みの例の居酒屋でした。

「ビールが100円でお馴染みの例の居酒屋」(※時期によりビールが120円、140円、180円のこともある。サワーやハイボールも200円以下)といっても、わからない人はさっぱりわからないだろうし、わかる人はすぐに「あの店か!」とピンと来ると思うのですが、あのお店の第一の特徴といえば、ビールやハイボール、サワーが、ソフトドリンクのウーロン茶よりも安い(確かソフトドリンクは300円くらいしたはずです)こと。同じような価格帯で飲めて同じようなメニューを出す居酒屋は、新宿だけではなく、神楽坂や六本木など都内のあちこちにあって、どうやらチェーンのようなのだけど、その実態がいまいちつかめないところも、店の魅力のひとつでした。

もうひとつ、当時まことしやかに囁かれていたのが、客層が階ごとに分けられているという説。一階はサラリーマンやOLといった会社勤め風の人たちのグループ(小人数)、二階は大学生や飲み会などのグループ、三階はライブ終わりのお笑い芸人やバンドマンの打ち上げ、四階は海外からのお客さんといったふうにわけで案内しているというのです。その理由は客同士の喧嘩を防ぐためだとされていましたが、これはあくまでも都市伝説みたいなもの。噂にしか過ぎません。だって実際、友達と飲みにいって四階に通されたこともありますし(その際に隣り合った外国人の集団に、クソほど辛くて一口食べれば涙が出てくるワサビ巻きを騙くらかして食べさせたのはいい想い出です)。

初デートが「例の居酒屋」になった理由

なぜそんな、初デートには圧倒的に不向きな居酒屋に行ったのか。それはデートの数日前に遡ります。その日、わたしは親しい友人たちと新宿で飲む約束がありました。どこで飲むか、ということになって、そのうちのバンド系の男性が「ちょっと前にビールが100円の居酒屋が出来て、バンド界隈で流行っている」と言うのです。別にかっこつけるメンツでもない上に、皆お金もさしてないから、ビール100円は魅力的すぎる。だったらそこしようということになって、行き、通された三階で飲み食いしたところ、とにかく会計が安い。「この店、使える~」という大満足の結果となったのです。

それから数日後。当時まだ付き合ってさえもいなかった夫と、デートをすることになりました。デートといっても、夕方に集合してどこかでサシで飲もうという約束だったのですが、悩ましいのは店選びです。

初めて男女がデートをする際の店選びというのは、なかなかに難しいのは皆さんご存知だと思います。酒は飲むのか飲まないのか、どれくらいの予算感で考えているのか、庶民的な店がいいのかそれともムードを望むのか、どっちかが奢るのかそれとも割り勘なのか。今回のデートに当てはめていくと、酒は飲む、予算不明、ムーディーな店は苦手そう、割り勘、だと予測しました。

そこから安めの居酒屋という解が導き出されたわけですが、しかし互いにこれまでの人生で、十回二十回は行ったことがあるであろうどこにでもあるチェーン店では、さすがにあまりに特別感がない。一応はデートなので相応にトキメキがあって、テンションがあがる店がいい……と考えたときに思い浮かんだのが、数日前に友人らと訪れたビールが100円でお馴染みの例の居酒屋だったのでした。だって行ったことがない人にとってはビールが100円ってそれだけで、(逆張りの)特別感がある。

というわけで、「ちょっとっていうか、かなり騒がしいんだけど、歌舞伎町にビールが100円の居酒屋があって。知ってる?」そう尋ねると、「知人らが最近、よくその店で飲んでいるから、ずっと気になっていた。是非そこがいい!」というふたつ返事。そうして、初デートの我々は、ビールが100円でお馴染みの例の居酒屋で飲むこととなったのです。