同棲必須派も不要派も、それぞれの言い分がある

まず、同棲と結婚の違いについて整理しましょう。
別居婚などの場合はさておき、生活を共にするという点は共通しています。ただし、公的な手続きや支援、共有の財産など、戸籍上の夫婦に認められていることは事実としてあるため、あなたの「同棲と結婚は責任感が全然違う」という考えは一理あると思います。
でも、あなたが注目しているのはそういった公的なメリットや書類上の夫婦だからこそ得られる権利についてではなく、きっと覚悟の話をしているのではないかな? と感じたのですが、いがかでしょうか。

同棲必須派も同棲不要派も、それぞれに相応のメリットがあると考えているからこその意見だと思います。

同棲必須派は、いくら交際期間が長くてしょっちゅうお互いの家に行き来していたとしても、いざ一緒に生活するとなるとまた違った面が見えると考えているのでしょう。体調の悪い日だろうが、仕事で腹の立つことがあろうが、理由もなくただ単に虫の居所が悪い日だろうが、別々に暮らしているときのように「会う約束をしていたけれど、やっぱり今日はナシにしよう」なんてことはできないわけです。どんな精神状態であれ、一緒に暮らしているとなるとほぼ毎日顔を合わせなくてはいけません。そういった、ハレのときだけでなくケのときにどういう過ごし方をするか、お互いに配慮があるか、対策を一緒に練られるか、というのはあらかじめ知っておきたい部分だと思います。

また、あなたはこれまで一度も実家を出たことがないんですよね。それは家庭の事情や考え方がありますから否定はしませんし、たとえずっと実家暮らしだったとしてもしっかり自立している人はいますから一概に決めつけられるものではありません。でも、もしかしたら彼は「お金の管理は大丈夫?」「家事はどの程度できるんだろ? 自分にばかり丸投げされてしまわないかな?」「他人と一緒に暮らす大変さを知らないまま、生活に夢を抱いていて危険なのでは……?」なんて不安に思っている可能性もあるかもしれません。
これらはあくまでもわたしの憶測に過ぎませんが、そういった点から「結婚前に同棲をしておきたい」という彼の気持ちも理解できます。

対して同棲不要派のあなたからしてみたら、これまできちんと付き合ってきたのだからお互いのことはよく理解しているし、これから徐々に二人の生活をつくっていけばいいという考えなのでしょう。もちろん、その考えも間違っていないと思います。
また、「婚約期間を設けて、入籍までの間に一緒に暮らすのならOK」と書いてあるように、同棲を始めることで彼が「一緒に暮らしてるんだからわざわざ籍を入れなくったっていいじゃん」と言い出し、同棲期間だけがズルズル長引いて結婚に踏み切れなくなるのでは?  という不安もあるかもしれませんね。
あなたの思う“結婚の覚悟”という観点から、少しでも嫌な面が見えたときに、「結婚してなくてよかった!」と軽い気持ちで自分と向き合わずに彼が投げ出してしまうのでは? なんて疑念を抱きかねないのも想像できます。
世間体や結婚にかかった労力が一種の抑止力になる、という話を聞いたこともあります(まあマジで別れたかったらそんなの気にしなくていいですし、もはや関係ないのですが……)。

ちなみにわたしは同棲必須派でも不要派でもない……というより、どちらの意見もわかるのです。結婚してすぐになんらかの大きな価値観の違いが露呈し、どうしても歩み寄れずに別れを決意するとなると、結婚にかかったお金や時間、労力から「同棲しておけばよかった! そしたら結婚前に気づけたのに!」と後悔する可能性を考えたら、たしかに同棲しておくことは大事だな、と思います。結婚して同棲にはない責任が生じたとしても別れられないわけではない、と先でお話ししましたが、それでもやっぱり同棲の解消に比べるとエネルギーは大きいし、何より面倒くささが伴いますしね。

逆に、結婚前提だったはずが一向に進展せず、のらりくらりと躱され続け、ズルズルと同棲期間だけが長くなることも危惧されるため、無駄な時間を過ごすくらいならさっさと結婚しちゃえばいいじゃんとも思っています。「ずいぶん無責任だな! 人の有限かつ尊い時間をなんだと思ってるんだ!!!」なんて責め方をしたくないですからね。
どちらの考えも、決して自分本位な考えではなく、相手のためでもあると思っています。