不確かな「信用」を得るために
「信用」とは、とても不確かなものです。
どうしたって証明しようがないものを信じる行為なのですから、ある程度のことは気にせず、時には見て見ぬ振りをしないとやってられません。
だからこそ、目に見えて実感できる相手の言動を代替として、信用できる/信用できないのジャッジをするのでしょうが、相手のすべてを把握して嘘や隠し事を見抜くことなんてできっこないわけです。そうなるともう、こちら側の気持ちの強さが試されてきます。
自由を制限したり、ことある事に行動をチェックしたり、詮索や束縛といった実際の行動には移しておらず気にしていない風を装っていたとしても、案外相手に雰囲気で本心は伝わるものなんです。そうなると息苦しさが募って、外での発散を求めてしまうことだってあるかもしれません。もちろん、だからといってそれ自体も容認できる行動ではないでしょうし、言い訳にしていいことではないのですが。
わたしは『彼を虜にするモテ仕草』だの『愛される女性がやってる10のルール』だのといった、決めつけが過ぎる小手先の指南書なんかはあまり好きではないのですが……恋人間や夫婦間のコミュニケーションにおいては気をつけるべき点はあると思っています。
たとえばですが、彼が友達と飲みに行って帰ってくるのが遅いことにあなたが不満を抱いているとしましょう。
それが連絡もなしに連日朝帰りをしていたり、無断外泊が続いていたりなど、あまりにも度が過ぎていて一緒に暮らしている相手への配慮が足りないのなら、さすがに「いい加減にしろよ」と苦言を呈すことになりますよね。
でも、それがたまになら、わたしだったら「遅くまで飲んでるのは全然構わないけれど、ごはんの準備があるしわたしにも生活スケジュールがあるから事前に連絡だけはしてほしいな」と伝えるに留めます。
飲んだ相手は誰なのか、どこに行ったのか、何を話したのかなどは一切聞きませんし、もちろん不機嫌そうな素振りも見せなければ、「わたしが寛大だからあなたは自由に遊べているんだよ」といった不遜な態度もしません。
聞いたとしても、「楽しかった?」くらいでしょうか。
「わたしはあなたのことを信用しているからね」「それを裏切らない範囲でどうぞご自由に」「あなたの良心と常識にお任せします」という、自ら知ろうとしない、無理に探ろうとしないというスタンスのもと、想像だけで疑わず、それでも入ってくる情報をふまえて相手を判断するでしょう。
たとえ恋人や夫婦でもあなたにはあなたの生活やプライベートがあることはきちんと理解しています、あなただけのテリトリーを侵害するような真似はしないですよ、と心に留めてコミュニケーションを取ることが、相手への信用の証だとわたしは思っています。そして、「わたしがこういうスタンスでいるのはあなたを信用しているからだよ」というのがきちんと伝わって、それを裏切らない行動を取ってくれてはじめて、相手を心から信用できるのではないでしょうか。
万が一、これを都合よく解釈されて「やったー! 何しても許されるんだ! 好き放題やっちゃお!」と目に余る行動が増えたり、「おれのことなんてどうでもいいんでしょ……」と見当違いの捉え方をするようなら、それこそ相手への信用は地に落ちます。
「見る目がなかった」「相性が悪かった」と、さっさと見切りをつけるでしょうね。
「4年付き合ったから」で選択肢を狭めないで
どうか、“信用する”という言葉に飲み込まれないでください。
もしもあなたが彼と別れる決断をして、今後新しい恋愛を始めたとき「相手のことを心から信用しなくちゃ」とプレッシャーに感じてしまうのではないかと、少し心配です。
もちろん、信用できる人/信用できない人の線引はあると思いますが、表面的に見えるものや細かな行動を気にするよりも(ひどい行動が多ければそれこそ信用できない人というジャッジになりますが)、あなたの中の大事なポイントを押さえているかどうかを判断基準にすることをおすすめします。
もしかしたら、ここまでわたしがお話しをしたことをすでにあなたは実践されていて、それでも彼を信用できずにいるのかもしれません。
もしそうだとしても、彼を信用できない自分を責めたりしないでほしい。
それは「だって彼がわたしの信用を裏切る行動ばっかりするんだもの!」と言い切っていいことです、あなたはひとつも悪くありません。
ただ、彼との今後を考えるとき、「海外での遠距離を耐えたのに」「同棲までしているのだから」「いろいろ乗り越えながら4年も付き合ったんだし」と、これまでの頑張りが無駄になってしまうのではないかと自分を追い込んで選択肢を狭めることはしないでくださいね。
あなたが変わろうと努力していることにすら気づかないのに、彼が変わってくれるのを黙って待ち続けるなんて、時間がもったいないですからね。
話し合いをしようとしたこと、自分も変わらなくちゃと一歩踏み出したあなたは、十分に素敵な人ですよ。
Text/ものすごい愛
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