幸福さをキープできれば、焦ることもない
35歳を過ぎると転職しづらくなるとか、記憶力が衰えるとか、揚げ物や肉が食べられなくなるとかも怖い。健康診断を受ける度に、バリウム飲まされるとか、結果が芳しくないとか、通院が増えて病気がちになるとかも。着実に、死に近づいているのだ。死そのものが怖いわけではないけれど、社会からお荷物扱い・役立たずだと思われることに怯えているのかもしれない。不可避であるのはわかりきっちゃいるが、嫌だな、できるだけ年老いたくないな、ともふと思ったりする。
けれど、これも一種の将来への不安なんじゃないかな、とも思う。なぜなら、この不安は私の経験には基づかない、すべて年配者からの伝聞であり、「そうなる可能性もあるかもしれない」「傾向として考えられる」というだけだ。世間に脅されているのだ。「年を取った人間には価値がないですよ」というように。それに、自分が実際に年を重ねてきて、現段階で何か困ったことはあるか? というと特にない。若かった頃よりも、猛烈に生きやすくなっている。1泊2日ロンドン弾丸旅行みたいな時差ガン無視のアホみたいな旅行だってするし、先日は朝からひとりですき焼きをかっ食らった。ストレスからなのか突然全力ダッシュしたくなって5キロを30分ちょいで走ってみたが、筋肉痛もない。飲酒量も減らないし、健康診断もオールAだった。
まあ、若い頃に比べれば見た目は老け込んだかもしれないし、恋愛市場に置かれた自身の立場も弱くなったかもしれない 。でも、その分だけ、生きるのが楽だ。それは、人と比べなくて済むようになったからだし、他人が思っている以上に自分に興味がないとわかったからかもしれない。今まで人生を生きてきて、私には好きなものがたくさんあって、どうすれば自分の好きなものに巡り合えるのかその方法がわかるようになったからというのもある。コロナになってから時間があるのも、依然苦しくはあるが金銭的な余裕も以前よりあるのも要因のひとつだ。
若いというのは、それだけで苦しかった。窮屈だったし、息がしづらかった。けれど、その苦しさは加齢とともに脱ぎ捨てることができる。「若ければ若いほうがいい」という考え方が世の常識であるかもしれないし、ただの強がりに聞こえるかもしれないが、私は今のところ、年齢を重ねてみて後悔していることも「若い頃に戻りたい」と思ったこともない。
ここまで書いて気づいたが、まあ私は現状に満足できていないんだろうな。今の生活が不安だから、そこに続く将来も不安になってくる。このままじゃだめかもしれないのに、何も変えることができないから、加齢が怖くなる。もし、充実した生活をしていれば、その幸福を維持すればいいだけだし、こんなにも焦ることはないはずだ。
ということは、やっぱり私の場合は仕事をなんとかしなければいけないなと思う。上手くいかないことも多いし、合わない同僚とはやっぱりいつまで経っても円滑なコミュニケーションが取れない。転職してもいいかもしれない。でも、その前に上司に相談してみようかな。将来の漠然とした不安を払拭するためにも、今を楽しく生きていくためにも、なんとかしなければ。
Text/あたそ
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