「短いスカートとか履くの?」酒場のセクハラで反応したのは意外な人物

旅先で入った店での出来事でした。とある繁華街の隅にぽつんとあって、「とんそく」「ホルモン煮込み」と白抜きされた赤い古びた暖簾が入口に掛かっているその店は、もしかすると隠れた名店かもしれないけれども、ただただ小汚くてどうしようもない店の可能性もかなりのところ高い。しかし、わたしは「普段は控えめなのにベッドに入ったらドスケベドS」ではないけれど、たまたま入った汚い店が、実は最高、というような夢を抱いているところがあります。さらに今回は旅先ゆえ、この機会を逃したら、次の来訪は叶わないであろうことを考え、勇敢にも夫と息子とともに、飛び込んだのでした。

飛び込んでみた居酒屋は…

店内は、外から見るよりもさらに薄汚くて、しかも暗い。薄暗いというレベルではなく暗いのは、店内の電灯の半分が消されているからで、飲食店なのにその節約必要ある?と突っ込みたいところですが、“そういう店”なのだから仕方がない。

入ってすぐのカウンターには、一番奥に60代くらいの男性、中央に20代後半から30代前半に見える女性、手前には奥の男性と同年代の男性が座って飲んでいました。オジサン×女子×オジサンという並びです。どの客もひとりで来ているようでしたが、カウンターの中にいる白髪の大将を挟んでぽつりぽつりと会話をしてる内容からして、みな常連客のようです。

カウンターを勧められたのを断って、「こっちに座ってもいいですか」と、後ろにあるテーブル席に腰を降ろすと、一番奥に座っている壮年男性が、息子に目を留め、「若い声がすると思ったら、子どもかい」と言い、自分が関わっている少年野球チームの話を始めました。時間は夜の9時を回っているし、幼児を連れに相応しい店でもない。けれど、それを咎めるような雰囲気はないので安心し、名物らしいとんこつを焼いたものと、メニューに記されていた<S>という聞いたことのない名前の酒、息子にはジュースを頼んだものの、サイダーしかないと言われて、仕方なくお水をお願いしました。マスターは冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出し、中に入っている白濁した液体をグラスへと注ぎ、小皿に入ったキムチとともに、我々のテーブルへと運んできました。

<S>、この酒は……韓流ブーム以前、大久保の古い韓国料理店でこっそり提供されていた瓶ビールに入った謎の酒、飲むとベロベロに酔っ払うと言われてた酒と同じ匂いがする。さっそく飲もうとしたところ、夫が制していったのです。「なんか浮いてる」

よくよく見ると、黒いゴマのような小虫がその表面を漂っています。いつもならばお店の人を呼んで「すみません、これ……」と交換を促すところですが、テーブルや調度品のあちらこちらに埃が溜まっているようなこの店で、それはあまりに野暮ではないか。そう思ったわたしは箸を突っ込んでそれを掬い取り、「大丈夫でしょ。乾杯」と、グラスを持ち上げて口へと運びました、ほのかな甘みと酸味。アルコールの味はしないけど、たぶん度数は高め。うん、これは間違いなくダメなヤツ!