広い心で寛容でいたい

ずっと前に10人くらい集まる女子会に女友達を誘って「こっわ! 行かない!」と言われたときも、友達と遊んでいるときたまたまデパコスコーナーを通りかかったとき、「何この空間、女子じゃん!」と何気なく言われたときも、私は悲しかった。些細な一言だし、そう思う気持ちもわからなくはないのだが、残念な気持ちになっている自分がそこにはいた。

だって、私たちはどうしたって女なのだから。どの場面においても女である自分を許し、そして自分の性別を認めてきた。女性である特権もいくらか濫用してきたはずだ。「女って嫌だなあ」と思うことなんてクソほどあるのかもしれないけれど、それでも女として生きていくことを今までの生活のなかでなんとなく決めてきた。

それなのに、ただ性別が同じだけの別の個体や同じ性別がたくさん存在する空間を恐れ、嫌うのは、自分の性別を真正面から否定することにつながる気がするからだ。「女だから」という理由でさんざん嫌な目にもあってきた。だからこそ、同じ女性にだけは自分の性別を容認されたい、気持ちを分かってほしいという思いがあって、その気持ちを踏みにじられた気がしたからかもしれない。

そう思うと、昔も私は恋愛にしか興味のない子や雑誌やテレビの世界で流行っているだけの文化しか追わない子をどこか見下していた。「馬鹿だな」「つまらないな」と思っていた。誰が好き、誰がムカつく、あの先生がうざい、そういう話が私の周りにはいつもあって、そういう退屈な日々の理由のひとつは私が女だからで、女に囲まれているからなのだと思っていた。でも、それは違う。生き方を工夫して、物事の見方を変えればいくらでも価値観は変わる。他人や自分の性別に対する考え方も緩やかなものにできる。

私は女に生まれて、自分が女でい続けることをなんとなく許してこの年齢まで達してしまった。自分の性別を恨んだこともあるけれど、これからも許し続けたい。同じ性別で、きっと同じような苦しみを経験しているからこそ、性別に囚われることなくできるだけ広い心を持って分かち合いたい。自分も、周りの人間も。できる限り分かち合いたいし、同じ性別に生まれたひとりの人間として、寛容でいたい。

Text/あたそ

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