新丸ビルやコリドー街もいいけれど… 疲れに染み入る街は他にある

さて、筆者は、毎週金曜日にはどこかの繁華街にアベノミクスのフィールドワークに出かけるということを、もう2年以上続けている。しかし、その中で気になっていた勢いを感じる街で、今回のランキングに登場しなかった街も多々ある。具体的に挙げると、丸の内の「新丸ビル」や有楽町と新橋の間「コリドー街」だ。どちらも金曜はカップルやグループ客で溢れ返っているので、男性や友達から指定されて行くことはあっても、おひとりさま自ら行く場所ではなくなっているのだろうか。

下町では、「人形町」や「門前仲町」も今どきは、女性が1人で入れるようなバルの多い町の代表になっているが、票は集まっていなかった。まだ、浸透しきってはいないようである。そして何よりも意外なのは、六本木・麻布十番・西麻布が上位に登場しなかったこと。特に、「麻布十番」は、バルや気軽なカフェが多く、活気のある街という印象が強く、1位もあり得るかと思っていただけに不思議ではある。

初めは、保守的なヒアリング結果だなあと感じたが、それなりに眺めながらこのランキングの理由などを考えてみるのは楽しかった。最後に、この大変なヒアリングに挑戦したR女史の感想を付け加えておこう。

50人の傾向を聞いて、R女史が感じたのは、全体的に漂う「疲れるのが嫌だ」という傾向だったという。「会社の人と一緒よりも、友だちや1人が気楽でいい」。「大きな繁華街よりも、家の近くや人の多くない地元の気心の知れたお店が気楽」みたいな話がよく出てきたようだ。ニューヨークでは、気どったマンハッタンよりもコンフォート(*4)なブルックリンが人気といった傾向があるというが、東京でも同じような“コンフォート志向”の「遊ぶ街」=「新宿三丁目」、「赤羽」のような変化が徐々に始まっているのかもしれない。

(*4)コンフォート 編集者・菅付雅信氏の『中身化する社会』(2013年、星)によると、ネットの進化、SNSの爆発的普及を背景として、ウソや誇張はすぐに検証される時代になったと指摘。その結果、一時の流行に流されず、衣食住すべてにおいて人々がより本質を追求するようになると論じた。同書に頻出する「comfortl(コンフォート)」という単語は「本質的だからこそ心地がいい」という意味合いで使われている。

Text/速水健朗

※2015年11月12日に「SOLO」で掲載しました