思想やスタンスが変わっていく自分を責める必要はない

――ただ、その生き方だと、後になって「あのとき、やっぱりああしておけばよかった」と後悔してしまうんじゃないか不安です。

鈴木

人の思想やスタンスってコロコロ変わるものだし、それを貫くことに意味を見出さなくてもいいと思うんですよ。先のことをいろいろ考えても無駄というか。
私も3年くらい前までは、どんなに趣味ややりたいことがあっても、会社員という立場は絶対捨てるべきじゃないという考えだったんだけど、普通に会社やめましたしね(笑)。

 私は「前と言ってたこと違うじゃん」と責められるのが一番嫌いなんです。だから、思想的にフラフラしてることを、自分で責める必要も全然ないと思います。

――「こうしなければいけない」という世間の規範を捨てると、自分の欲望に従って生きるしかないと思うのですが、正直、自分の欲望ほど信用できないものもないんじゃないか、と思ってしまって……。

鈴木

確かに、欲望というのは基本的にどこに向かっているかわからない上に、永遠に終わりがないですからね。不安と同じで、何が不安なのか自分でもわかっていないけど振り回されてしまったりする。
欲望にドライブされて、即時的にいろんなことをしちゃうのは、人間の宿命なので仕方がないとも言えます。

 だから、自分の欲望にある程度のプライオリティ(優先順位)を付けておくといいんじゃないでしょうか。
仕事だけはしっかりやって、それ以外は欲望のおもむくままでいいやとか、恋愛だけはまじめにやって、仕事は出世を求めず食える程度のスタンスでいこうとか、彼氏はどうでもいいけど女友達は大事にしようとか、何があっても家族とは週1回会おうとか。

 25歳を過ぎた辺りで、“自分の中で一番大事なもの”“その次に大事なもの”“そんなに大事でないもの”という色分けをして、これだけは譲れないという取捨選択と順位付けをしておくと、大きく間違えることもないと思う。
逆に、“そんなに大事でないもの”で多少間違ったところで、別にいいと思うんですよ。