「パーティーの華も喋ります」美男美女に言葉返したい /長井短

長井短さん

「パーティーの華」って言葉を200000000年ぶりに聞いた。へぇ、これって本当にある言葉なんだぁって思いながら、意味をぼんやり思い出す。確かあれだよね、いるだけで場が華やぐみたいな、そういうやつだよね。褒め言葉…だったっけ? 私にはかなり切れ味の鋭い悪口に聞こえるけれど、世間一般ではどうなんだろう。「美人は三日で飽きる」と同じようなウザさがある言葉だ。もし目の前に「パーティーの華」がいたならば「華じゃねえよな! 喋るもんなお前!」って、ルフィ言葉で声をかけたい。

面白かったのは、この言葉を使ったのが女友達で、イケメンに対して投げかけられたこと。もちろん、目の前にいるイケメンに直接「パーティーの華だね」と言ったわけではない。ちょっとした話しの流れで「イケメンはパーティーの華」と言ったのだ。

いるだけでありがとう、パーティーの華

「パーティーの華」でググると、「パーティーや行事で最も魅力的な女性」ということらしい。やっぱそうだよね、これって元々、女性に対して使われていた言葉だよね。それを女性が男性に向けて使っているところは面白くて、同時に少し怖くもあった。なんか…そういうのやめない? うちらやられてあんま良い気しなかったんだから、返す刀じゃなくて捨てとこうよ、と思ってしまう。でもそれは、たまたま私がこの言葉にネガティブなイメージを持っているからってだけかもしれなくて、人によっては正統派の褒め言葉と思っている可能性も大きいのだ。

率直な感想は「なんで?」だった。いるだけで盛り上がる人間って、あり得なくない? と同時に「誰かたちにとっては、イケメンってのは『いる』だけで嬉しい」ということを学習した。あ、なんか知ってるこれ。見たことあるぞ。

仕事柄、パーティーめいた場所に行く機会は少なくない。やれブランドのローンチだの、コレクションだの、オープニングだの。東京の至る所でひっそりと、パーティーは起きている。そこには商品と一緒にシャンパンとフィンガーフードが置いてあって、もぐもぐごくごくしながら商品と写真を撮ったりする。あら、シャンパンが空いちゃった。そこに登場するのがイケメンボーイだ。一見してモデルだとわかる高身長に小さな顔のその人たちは、空いたグラスを引き取り新しいシャンパンを渡してくれる。あ、ありがとうございます。感謝しながらも、プロじゃないので所作に違和感はある。でも、そうじゃないのだ。会場にスタイルのいい若い男の子たちが大勢いて、彼らがグラスを持って回ってくれているという状況。ザッツスタイリッシュなのだ。

もしこの手のアルバイトがなくなったら、モデルを続けていくこと自体が難しくなる人たちもいるわけで、となると、うーむ。あってよかったパーティーの華ということにならんこともない。や、だけどここまでは、あくまで仕事としての「パーティーの華」の話だ。