――そもそも、恋愛感情をもとにして婚姻関係を結ぶことが、いびつで無理があるシステムだということですね。

鈴木

まあでも、『マディソン群の橋』や『昼顔』みたいに、結婚していても揺れ動く不倫や浮気心から小説やドラマが生まれたり、結婚していないことで過ごす寂しさからラブソングが生まれたりする。
あんまりうまくできていない制度と、それを乗りこなせない人がいることで、そこに文化が生まれて世界が豊かになるならいいかな、とか私は思っちゃうんですよ。

 結婚しているからこそ、昔みたいに深夜2時にテンション高くカラオケしていた楽しさを失って寂しいなと思う夜もあるし、結婚していないからこそ、風邪引いて深夜に目が覚めても誰もいない寂しさを噛み締める夜もあって、そういう寂しさを楽しむというか、味わうのが人間の深みって気がしますけどね(笑)。

結婚しなくても不便を感じない制度変更が必要

鈴木涼美 宮本晶比古

――結婚って本当に向き・不向きのような気がしてきました。

鈴木

ある種のネオコン女子というか、階層の安定や上昇のために、コンサバティブに結婚という制度を乗りこなせる人はいいんです。
問題は、仕事もやめたくないし、好きな人と一緒にいたいと思ってしまう多くの現代女性が、結婚という制度を利用しなくても、なるべく不便を感じずに生きられるかどうか。そのための制度変更の必要性は感じますね。

――やっぱり、仕事や恋愛を続けたい人にとって、結婚は失うものが多すぎるんですよね。

鈴木

現状がそれなりにけっこう楽しいぜイエーイっていう人は、わざわざ結婚せずに現状維持を選びますよ。逆に、会社をクビになったとか、生活が思うようにいかずくさくさしてるときに、“結婚に逃げたい”みたいな感覚になる気持ちもわかります。

 だから、すでに結婚している女性が離婚する自由よりは、独身女性がこれから結婚する自由のほうが開かれているんだと考えたらいいと思う。しんどくなったり、死にたくなったりしたら結婚すればいいんですよ(笑)。

 今は結婚を考えられないというなら、40歳や45歳で結婚するような選択もこれからはあっていいと思うんです。ある程度自分で稼げる手段を持っている人は、表立っては言わないけどそういう選択をしている人も多い。

 私の母の周りにはいわゆるキャリアウーマンが多いんですが、やれるところまで出世して部長になってから、趣味のオペラ鑑賞の会で知り合った人と結婚した、といったケースも聞きますね。