相手の突出した良さを一つだけ見つける
友人に、友達作りがものすごく上手な女の子がいる。現在30歳で、クリエイティブ職の彼女。実は極度の人見知りで、共通の知人を通じで出会った初対面の際には、さながら一問一答の試験みたいな、ぎこちない会話が繰り広げられた。だからまさか、私が彼女のことを、友達作りがうまい人だと思っているなんて、彼女自身全く気づいていないはずだ。でも、彼女のやり方はすごい。シンプルに言うと、潔いまでに「餅は餅屋」方式なのである。
周りにいる人の、絶対的に信頼できる能力を何か一つ見つけ出す。
それらはすごく小さなこと、もしくは精神的なことで、字が綺麗だとか、声が大きいとか、映画をよく知ってるとか、押しが強いとか、初めての人と話すのがうまい、とか、そういうことでいいようだ。で、ふとしたとき「これができるのはどうしてもあなたしかいない」とお願いして、力を貸してもらうのだ。
もちろんお願いする内容だって、相手の負担にならない軽いもので、そうでない大掛かりなものなら、仕事として発注して、報酬を払う。自分の思いがけない良さに気づいてもらえたり、能力を絶対的に信頼されて任されることで、嫌な気持ちになる人なんていないし、相手に頼みごとをすることで、反対に、私もあなたにこれぐらいのことをしてあげられるよって、扉を開いておくことができるのだ。
加えて、大人の友人関係では、どこか一箇所でも尊敬できる部分があることって、かなり重要だ。それがなければ、一緒にいる時間にただ相手を見下して悦に浸るだけの、浅ましい関係性が簡単に誕生してしまう。だから彼女のように、相手に何か一つ、その人にしか座れない椅子を用意してあげる「餅は餅屋」方式、すごくいい方法だなと私は思うのだ。
そんなわけで、SNSでの出会いの敷居が高くなった今日この頃。未知なる場所に足を踏み入れて、全く新しい友達関係を模索するのも良いけれど、勇気がまだちょっと足りないというときには、会社の同僚や、友達とは言えない知り合いの顔を、あらためて心の中に思い浮かべてみるといいかもしれない。その人しか持ち得ない優れた能力に気づいて、そこに絶対的な信頼を寄せてみる。
人って、往々にして受け身だから、一見、自分とは合わなそうだなと思っていた人だって、案外、自分のアプローチ一つで、意外な一面を見せてくれたりするものなのだ。
Text/紫原明子
※2015年12月16日に「SOLO」で掲載しました