意外でなおかつ非常に興味深かったのは、学者が誰ひとりとして不倫を 「してはならないもの 」と否定しなかったことだ。
これは『人はなぜ不倫をするのか』のあとがきにある文章である。この本は、ライターの亀山早苗さんが、ジェンダー研究の上野千鶴子さんをはじめ、宗教学者、行動遺伝学者、昆虫学者、脳科学者など8人の学者たちに、タイトルにある「人はなぜ不倫をするのか」を聞いてまわる興味深い対談集だ。
あとがきにある通り、結論からいうと本書で学者たちは誰ひとりとして不倫を否定しない。動物学的にはしてしまうのが当然であり、社会学的にもやむを得ないことが多い……と、8人とも答えている。
今回は、現在進行形で不倫に悩んでいる人はもちろん、単純に好奇心を満たしたい人にもおすすめできるこちらの本をもとに、「不倫」について考えてみたい。
不倫・浮気をする男性の特徴は?
恋愛系のウェブサイトなどをのぞいていると、「不倫・浮気をする(しない)男性の特徴5つ」なんて記事を見かけることがある。だけど『人はなぜ不倫をするのか』を読むと、この手の記事はあまり意味をなしていないのではないかと私は思ってしまう。
なぜかというと、亀山早苗さんの本を読むと「不倫・浮気をする男性の特徴は、人間であること」としか言えないくらい、パートナーがいながらも他の相手に惹かれてしまうことは、どんな男性にも起こり得るとわかるからだ。
もちろん、私はここで旧来の「男はみんな浮気するものよ」的な格言を持ち出すつもりはない。というか、「不倫・浮気をする〈女性〉の特徴」もまた、「人間であること」としか言いようがないくらい、ヒトはもう種としてそういうもんなのだ、と本書を読んでいると腑に落ちる。今まで女性の不倫・浮気が目立たなかったのは、戦前まで姦通罪が存在していたことと、あとは不貞行為に対する社会的抑圧が男性の何十倍も強かったせいだろう。種としては女性も、男性と同レベルとまではいかないものの、当然のように不倫・浮気をする生き物なのだとわかる。
私が興味を惹かれたのは、産婦人科医の宋美玄さんが、島根の出雲で行われたアジア・オセアニア性科学会にて、地元の高齢女性にしたインタビューだ。ある高齢女性は、「若い頃は毎日のように違う男とセックスしていた」と証言する。かつての日本には、お祭りの晩は誰とでもセックスしていいという慣習が存在した地域もある。そして生まれた子供は、夫婦でというよりは村で、地域で育てていく。雑というか、大らかというか──でも誤解を恐れずにいうと、私は「楽しそうでいいな」とちょっと思ってしまった……。
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