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「好きな絵は?」 親しいあの人に 不意打ちでぶつけてみたい質問

相手を困らせるちょっと変わった質問

チェコ好きさんによるSOLO連載おひとりさまのゲームの規則

 好きな小説、好きなエッセイ、好きな映画、好きな音楽。頼まれもしないのに──とか言ったら怒られそうですが、そういったものについて頼まれもしないのにアツく語ってくれる人は世の中にごまんといます。というか、私自身がまさにそういうタイプです。

 しかし、本や映画や音楽って誰しもがある程度は語り慣れているというか、「この本をこのようにして読む私」を意識して、良くも悪くもその人の中で話を作り込んでいることが多いなと感じます。それがダメなわけではないんですが、私は性格が悪いのか、どうせ人とお話するならもうちょっと相手を困らせる質問をしてみたいなと思ってしまうんです。「えっ、考えたこともない」と相手が目をぱちぱちさせるようなことを。

好きな理由は「なんとなく」としか
言いようがない……

 相手の目のぱちぱち率が比較的高い質問とは何か。私が思うに、それは好きな小説でもエッセイでも漫画でもなく、「好きな絵」を聞くことです。
もちろん美術館が大好きで比較的すらすらと答える人もいますが、好きな絵をたずねると、「え〜、なんだろ……?」と一瞬間が空く人が多いです。
ポイントは、「好きな画家」ではなくあくまで「好きな絵(作品)」を聞くことで、前者は小説や映画と一緒でけっこう語り慣れている人もいるのですが、単体の作品である「絵」を答えるのってちょっと時間がかかるというか、シンキングタイムを設けないと先に進まない場合が多い気がします。

 そんな私の好きな絵は……とかって語り出すと、好きな絵がそこそこたくさんある私の場合キリがなくなるので自制しますが、私の人生で初めて鮮烈な印象を与えたのは、ジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』であった気がします。シェイクスピアの『ハムレット』が題材で、恋人のハムレットに父親を殺されたショックで気が狂ったオフィーリアが、川に身を投げ溺死するところを描いた絵です。

チェコ好きさんによるSOLO連載おひとりさまのゲームの規則 オフィーリア (絵画)/画像リンク元:wikipedia

 中学の美術の教科書で見て釘付けになり、その授業の時間はずっと上の空で教科書を眺めていました。でも、『オフィーリア』の何が当時の私を釘付けにしたのか、それは未だに上手く説明できません。

言葉では繋がれない絵画の世界

「好きな絵」を聞いて、相手が考え込んでしまって、ちょっと間が空いて……となるのがこの質問をした場合のお決まりのパターンです。だから、私の中では案外、親しくない人にはできない質問だったりもします。しかし、聞いてみるといつもだいたいヘンな答えが返ってくるので、やっぱり面白い質問だなあと思います。

 以前、好きな絵とかが全然なさそうな知人の男性に聞いてみたところ、「山口晃」という答えが返ってきたので理由をたずねたら、「あなたがお土産に買ってきたクリアファイルがかっこよかったから」と言われたこともありました。
山口晃という画家はその彼と名前の響きが似ているので、面白いかなと思って美術館で売っていたクリアファイルをお土産としてプレゼントしたのです。そうしたところ、どうもその山口晃の絵を気に入ってくれたらしい。なんか、そういうこともあります。

 絵を見ているとき、きっと私たちは、小説を読んでいるときや音楽を聴いているときよりも、言葉で繋がれないが故に孤独なのだと思います。そして私は、そんなふうにして孤独と孤独をぶつけ合わせることができるから、この質問が好きなのかもしれません。

※2017年7月27日に「SOLO」で掲載しました

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