お金の使い方とモノの買い方で、人生観というやつがわかってしまう……

素敵なものを買うとより仕事が頑張れる人もいますが、もちろんそうじゃない人も。自分のお金の使い方を見直させてくれる買い物エッセイを紹介します。

買い物をしている女性の写真by ©Traveloscopy

 お買い物と女性。女性といえばお買い物が大好きな生き物であるとされ、世の中には女性作家による「お買い物エッセイ」という一大ジャンル(?)まで存在しています。山内マリコさんの『買い物とわたし~お伊勢丹より愛をこめて~』も、そんなお買い物エッセイのなかのひとつ。

 ただ私は正直、この手のお買い物エッセイに共通して見られるある語り口が、今までいまいちしっくり来なかったのです。たとえば、『買い物とわたし』で取り上げられた記念すべき最初の一品は「プラダのお財布」なのですが、こういう素敵なものを買った後の女の人は(彼女が仕事ができる人であればあるほど)こういうのです。「またこういう素敵なものを買えるように、お仕事がんばろう!」。

 だけど、「こういう素敵なものを買うためには、また汗水流して働かないといけないのね……それならもう素敵なものはいらないから、家で寝てたい」と思ってしまうアラサー女性だって、いるはず。というか、ここにいます!
山内マリコさんのお買い物エッセイは、従来通りのお買い物エッセイが好きな女性にもおすすめだけど、そんな家で寝てたい系のお買い物で大きな喜びを得にくい女性にもおすすめなのです。

プラダのお財布を買った山内マリコさん

 さて、それまで使っていたイルビゾンテの二つ折り財布に別れを告げ、伊勢丹新宿店で約9万円するプラダのお財布を買った山内さん。高揚した気分で店を出たあと心中でつぶやいたのは、「仕事がんばろう……」という一言だったようです。「仕事がんばろう!」と「仕事がんばろう……」の間には、越えられそうで越えられない高い壁が存在していると思うのは、私だけでしょうか。後者には、そこはかとない「トホホ感」があり、私などでもちょっと共感できます。

 プラダのお財布の後に『買い物とわたし』に登場するのは、たとえば〈「冷え知らず」さんの生姜トマトチキンカレー〉。山内さんはこのレトルトカレーが大変好きだったそうなのですが、なんと販売が終了してしまい、自宅にただ一つ残った賞味期限切れのトマトチキンカレーを前に「開封しようか、それともいっそオブジェとして飾っておこうか」と悩むのです。
そう、私が読みたいお買い物エッセイはこれだった。ブランド物、長く使えるこだわりの品、オーガニックの洗剤、そういうのももちろん素敵なのだけど、人がものを買うのはいつも伊勢丹なわけではないじゃないですか。いつも行っているコンビニで売っていたレトルトカレーが好きだとか、「富山のお土産シリーズ」のます寿司のピアスだとか、そういうものについて書いているお買い物エッセイが私は読みたかったわけです。

 あと、「私が選び抜いたこだわりの品」ばかりを書いているわけではないところも読みやすいですね。たとえば、セレクトショップで1万円もする白くておしゃれな傘を購入した山内さん。しかし、その日のうちに汚れがすごく目立つということに気付き「白は失敗だった」と悟ります。気分が高揚していると、「白は汚れる」というだれでも知っているような事実が意外な盲点になってしまうこと、ありますよね……。