知らずに洗脳されるか、わかっていて洗脳されるか

そうなんです。私の「結婚したい」は、法的に好きな人と財産を共有したいという意味ではなかったのです。じゃあ何なのかというと、よく考えていいかえると「社会的な体裁を整えたい」とイコールだなと。日本に住んでいるアラサ―女性が独身だと、魅力がない女だと思われるから。人間的に問題があるやつだと思われるから。さみしくて不幸な人生を送っていると思われるから。だから結婚したいって思ってたんです。日本が結婚しないことが普通に受け入れる社会になったら、私はたぶん「結婚したい」なんていいません。

私と同じような「結婚したい」を抱えている女性がどれくらいいるかはわかりません。でも自分の結婚願望の裏側に気が付いてからは、なんだか気持ちがすっとラクになりました。結婚したいという願望自体も、すでに結婚した友人たちも否定するつもりはないのだけど、私もみなさんも、日本という社会で生きている以上、やっぱり日本社会の価値観や規範にとらわれているし、その枠のなかで物事を考えてしまっています。

「結婚したい」とのたまう女性に質問です。あなたはそれを、日本が事実婚を普通に受け入れるような国になっても、いい続けますか? あなたの「結婚したい」を解体すると、何が出てきますか? もちろんその正体に気が付いても、日本社会の価値観や規範から外れることは難しいし、無理して外れる必要もないです。

ただ、我々の生きている社会が持っている価値観なんて相対的なものでしかなくて、絶対的なものじゃないんだって思うと、だいぶ救われると思うんですよね。特定の社会の価値観に洗脳されていると知らずに「結婚したーい」と呟くのと、洗脳されているとわかって「結婚したーい」と呟くの、私は後者をおすすめします。段違いにラクだから。

しかし、となると私は毎日1回「社会的な体裁を整えたーい」って呟いてるんですね。根無し草のようで、実は意外と社会性があるようです。そしたら今度からは「結婚したいです」じゃなくて、まわりの人にも堂々と「社会的な体裁を整えたいんです」っていっていこうかな。自分の本音を堂々と主張していくことによって、少しずつでも、世界が変わっていくような気がするから。

Text/チェコ好き

※2015年10月5日に「SOLO」で掲載しました