物語は自分よりも雄弁に、自分のことを語ってくれる

『断食芸人』について語りだすと私の孤独と世の中へのルサンチマンが溢れでて収拾がつかなくなるので話をまとめますと、自分が心の底から共感できる小説の登場人物や、自分の生きる上での思想がまとめられているかのような本があると、他人に自分のことを伝えやすくなります。私自身の口から孤独や世の中への絶望を語るより、そこはプロ、というか文学史に名を残した巨匠の力を借りたほうが、おそらくより多くのことを相手に伝えられるでしょう。
そして何より、「私の考えていることは、この本のなかに書いてあるよ」と、そんなふうにある1冊を知人に紹介してもらえたら、たとえその人と合わなくても、表面上はうまく友達になれなくても、なんだか互いに通じ合えたような気になりませんか。

こだわりの「モノ」を並べるように、私は自分の思想を本棚に並べたい。30歳付近の大人になったらそんな目線で、まるで自分のことが書いてあるかのような「お前は俺か小説」を見つけて、ぜひみなさんもいろんな人に紹介してあげて欲しいなと思うのです。

Text/チェコ好き

※2015年11月5日に「SOLO」で掲載しました