不倫は正しい恋じゃない。そんなこと分かっているから、私は肯定も否定もしない。

友人から不倫を告げられた

不倫の決定的な瞬間の画像 ぱくたそ

「子どもは好きなんだけど、もう奥さんとの関係は冷めきっていて、すぐに離婚するんだって」という、絶対に別れないであろう男の言い訳を彼女の口から聞いたとき、私はなんと声をかけていいのかわからなかった。
あの時私は、どんなことを言えばよかったんだろう。何が正解だったんだろう。今でも、少し考えることがある。

「そんなの、やめておきなよ」「子どもがいるのに若い子に手を出して、そんなクソみたいな理由を言うような男にろくな奴はいないよ」という私の反対意見なんて、きっと彼女には届かない。
一度結婚したら他の異性と恋愛してはいけないこと、ありきたりな言い訳を並べて不倫相手をその気にさせ続ける男がろくでもないことは、きっと私以上に彼女が一番知っているはずだった。それでも、その人でなければいけない理由が彼女のなかにはあって、関係を続けていく理由もあるのだろう。それもきっと、私にはずっとわからないままなんだと思う。

 だから私は、ただ話を聞くだけで、肯定も否定もしない。いつか、彼女の恋が終わりを迎えたときに、「馬鹿だねえ」とも「こうなることなんて、わかっていたじゃん」というようなこともきっと言わないだろう。でも、たとえば、今付き合っている男が本当に離婚して、彼女と結婚できることになったとしても、私は「おめでとう」とは絶対に言わないけど。

 彼女がこの恋愛をはじめたのは、つい最近のことらしい。きっかけが色々あったことは、なんとなく予想できる。突然、友達や知り合いがひとりもいない名古屋で働くことになってしまったとか、もともと趣味があんまりなくて、寂しがりやで、人と一緒にいるのが好きだとか。人見知りで新しい人に出会うのが苦手だから、どうしても仕事の人ばかりの付き合いになってしまうというのも関係があるかもしれない。

 心の中に自分ではどうしても埋めることができない大きな隙間があるとき、人は簡単にダメになっていく。そういうときに人から優しくされてしまうと、そりゃあ好きにもなるよ。わかるよ。そんなの、誰だって経験するじゃん。しかも、相手は職場の上司で、一度“結婚”という形で恋愛を成功させたような人で。
いつもダメ男ばかりを好きになってしまう彼女が次は不倫、と順当にダメ男にはまっていくのは、なんだか納得がいく気がした。